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ピッカピカの会社ばかりじゃ面白くない ~ 三菱電機の思い出話 [株式の個別銘柄]

三菱電機の株主総会レポートで、この会社は好きな会社、と書きました。保有している銘柄の中では愛着のある銘柄です。

好き嫌いの世界の話ですから、投資対象として優等生であるとは限りません。数字を見れば、事実この会社より優秀な銘柄はいくらでもあります。でも、誰が見ても優秀な、ピッカピカの会社ばかりでは面白くないでしょう?

今でも印象に残っているエピソードからご紹介しましょう。時代は20年以上遡り、私が日本株のファンドマネージャーとしてワーカホリック気味に働いていたころ、初めて企業によるCSRのプレゼンテーションというものを聴いたのですが、それが三菱電機だったんですね。少々意外ではありませんか? もしかするとまだCSRという言葉さえ使われていなかったかもしれません。参加した感想は、「へえ?」という感じ。環境を守るのは良いことでしょうけれど、どう反応していいか、まだよく分かりませんでした。

もう一つ、その頃のエピソード。私事ですが、父は知財を専門とする法学者でした。ある時同僚の教授について、「最近新しく来た教授は、三菱電機出身なんだそうだ。」と話してくれたのです。企業出身の教授は珍しかったのでしょう。先日の株主総会で、知的財産活動に注力する、という項目があったので思い出しました。昔から注力していたと信じるに足る思い出話。

さて、当時三菱電機という会社は、「重電三社の三男坊」とでもいうべきポションにありました。証券コードの順番通りで、日本の産業全体を包みこむような安定感のある日立、半導体をはじめとするエレクトロニクス分野で技術力の評価の高い東芝、それに対して、一応何でもそろっているが、どこが特に強いのかはっきりしない三菱、というイメージでした。しかも同じ三菱グループには、三菱重工という兄貴分までいましたので。

その頃、総合電機をカバーするアナリストさんたちは、たいてい東芝が好きでした。DRAMなど、半導体の技術が優れていたからです。少し前までは、半導体と言えば花形でしたからね。しかし三菱は、それまでのリストラで半導体事業をすっかり縮小してしまっていたのです。DRAMはもうやめていたと思います。

そのほかにも、パソコンの本体だとか携帯電話端末だとか、電器メーカーなら品揃えとして必要だよね、という感じのものを、さっさとリストラしていました。他社に比べて経営に余裕が無かったということかもしれませんが、大きな電機メーカーの中では「選択と集中」ということを早くから理解して実行していた会社だと思います。家電製品も、利益が出なくなると一つずつ撤退しているようで、優秀なものだけが残っている印象でした。

実は、今でも総合電機として分類されてはいるものの、この会社の稼ぎ頭はFA(ファクトリー・オートメーション)です。FAと言えばその代名詞とでもいう会社がファナックです。こちらはまさにピッカピカの優良企業。営業利益が3割も出てしまうような超高収益企業です。三菱電機のFAはそれよりもかなり薄まっていますが、事業の性質としては収益性が高いわけです。ただ「総合電機」であったために、十分な評価がされているとは思えませんでした。実際三菱電機は「総合電機の三男坊」としての評価を受けていたのです。

そもそもエレクトロニクスのアナリストさんたちは、FAなんかに興味が無かったのです。それは機械産業のアナリストがカバーする分野で、エレクトロニクス技術の先端を追っていた専門家の眼には、退屈な産業だったに違いありません。だから三菱電機を奨めるアナリストは皆無か、いても非常にレアでした。当時の私は「三菱電機より株価の高い東芝は許せないね」というのが口癖でした。だから今の株価の差を見ると、何だかいい気分になるのです。

この会社は一般の保守的なイメージとは裏腹に、割と合理的な考え方をする社風なのではないかという気がしています。だから選択と集中が進んだのか、またはそれを進めているうちに合理的になったのかは知りませんが、時々ふと目につくことが、これまでもありました。今回の株主総会でも、株価の低迷に不平を言う株主には、さらりと正論で答えています。

そんなわけで、優等生っていうわけじゃない、でも、みんな知らないだろうけど、実は結構デキるやつだよ、という感じがお気に入りの所以です。好みの問題ですけれどね。


→ 2018年の株主総会 

タグ:三菱電機
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