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「投資の神様」の商社株投資 [投資スタイル]

先日は「投資の神様 ウォーレン・バフェット」が日本の商社株の大株主になったというので大いに話題になりました。バフェット氏のファンドが日本株に投資をすることが珍しいとしても、銘柄選択としては特に違和感ないと感じる人が多かったと思います。

バフェット氏の投資手法は元来「バリュー株投資」です。成長を求めて中国へ目を向けたりもしていたようですが、成長株への投資で差別化できているという印象はありません。成長株は良いとしても、未知のテクノロジーへの投資は、バフェット氏のテリトリーとは言えないでしょう。

私自身は今の米国株に特に詳しくはありませんが、バフェット氏が日本に目を向けることにしたというのは、アメリカ市場に、彼のお眼鏡にかなうバリュー株が少なくなったということかな、と感じています。かつての米国株は、明らかに魅力的でした。優良企業でも日本よりはるかに高い利回りで配当が手に入り、そのうえ資本効率・成長性で見ても、日本企業より優秀な銘柄が数多くありました。長年の間に米国企業の株価が高くなり、日本株の配当利回りが高くなったことで、両者の差が無くなってきた、そんな象徴としての出来事かもしれません。

今は米国株市場そのものが成長株です。キラキラした成長ストーリーがたくさんころがっていて、株価が高くても成長するのだから構わない、と言って投資家は投資をします。もちろん成長し続ければ、実際高い利益があがるでしょう。ただ、誠実な投資家であれば、その成長が続くという確信を得るために、それなりのリサーチが必要です。なかなか大変な作業です。

日本の総合商社株が安いことは確かです。配当利回りで見ると、株価がずっと好調な伊藤忠商事でさえも3%台ですし、原油安で苦しむ三菱商事は5%台です。尤もグローバルに見れば、成長性があまりないと思われている企業で5%はザラですが、少なくともそうしたグローバル企業に見劣りはしないと言えるでしょう。

商社株が安い理由によく出てくるのが、「コングロマリット・ディスカウント」という表現です。事業の多角化によって企業の進む方向が見えにくくなる、成長性が落ちる、等々の理由で、それぞれの事業の評価の合計より全体の評価が低くなる、という現象です。日本の総合商社ほどの多角化ぶりともなると、たくさんあり過ぎて投資家が消化不良に陥る、という要素もあるような気がします。

しかしその一方、分散効果で業績の安定には貢献しているわけです。今回の三菱商事のように、市況産業の様相を呈しながら、市況低迷時に減配や無配にならずに済むのも、市況産業とは異なる多くの事業が稼いでいるから、ということはあるでしょう。そうした安定性に対する評価が低いということに、特段合理的な理由はありません。バリュー投資とはそもそも、合理的とは言えないほど評価の低いものに投資するやり方ですから、条件に合っていますね。

商社の市況・景気敏感株としての側面も、投資の神様のお気に召したようです。市況の安い時、景気の悪い時に投資しておけばいいだけなので、慣れたものでしょう。循環の底を見定めるのに、新しい技術の先行きを占う必要もありません。

日本の株式市場が世界から見直されるのは、もちろん喜ばしいことではありますが、割安株としての日本株、市況株としての日本株、というだけのことであれば、寂しいような気もします。日本経済が今さら高成長するなどとは期待しませんが、「成長株」と呼べる選択肢も、もう少し増えてほしいものです。

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