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株主優待で銘柄を選んでもいいの? [投資スタイル]

株主優待で銘柄を選ぶ、というのはいいことなんでしょうか。・・・先日のオンラインセミナーの際にいただいた質問です。

いいに決まっていると思う人もいるでしょうけれど、機関投資家にすれば不公平な制度です。優待品は主に個人投資家を対象にしたものだからです。機関投資家の保有株を管理する信託銀行が、昨今どのように優待品を処分しているのかまでは調べていませんが、少なくとも株式を発行する企業が、機関投資家ではなく個人投資家を喜ばせたくて、優待品を送っていることは間違いありません。

では、不公平であることはいけないことなんでしょうか。企業が個人株主を大事にするのは、一般の個人に株主になってもらうことにメリットを感じているからです。大事にしたい顧客があるのと同じように、大事にしたい株主だってあるのです。ですから優待という形でそれを表すことは、自然なことではないでしょうか。評論家的な言説は、どうしても機関投資家寄りになる傾向があるでしょうけれど、個人投資家の事情はまた別です。

個人株主と聞くと、何となく心もとないイメージを持つ人もいるでしょう。確かに一人ひとりの株主は心もとないかもしれませんが、たくさんの個人に株式を持ってもらえば、むしろ株式の保有構造が安定すると思います。個人と言うと短期売買、と思っている人もいると思いますが、多くの個人株主は長く株式を保有しています。

2019年の証券業協会のレポートによれば、調査対象者の22%が平均10年以上、それを含む40%が5年以上と答えています。これは人数のカウントですから、常識的に考えて、金額の比率にすれば、長期保有の比率はずっと大きくなるでしょう。短期売買の印象が強いのは、短期の投資家向けには毎日毎日新しい情報が発信されるのに対し、長期保有者向けの情報は目にする頻度が格段に少ないからだと思います。

個人株主は、極めてバラエティーに富んだ種類の人たちの集まりです。保有している事情も投資に対する考え方も様々、したがって投資行動もバラバラでしょう。個人投資家が一斉に同じ方向に動く、ということはなかなか考えづらいと思うのです。

機関投資家というのは、同じ業態であれば抱えている事情は似通っていますし、運用者は同じようなことを考えています。当然ながら、一定の投資環境でとる投資行動も似てきます。ですから何か非常事態が起きた時に、大量の株式が一斉に一つの方向に流れるということも、十分起こり得るのではないでしょうか。

ファンドマネージャーはプロですから、投資判断は企業の経済的価値が全てです。また成果を見せるための時間的な制限もありますし、その他にも色々な報告義務を負っています。それに対して個人投資家は、自由に投資行動をとれますし、幅広い評価軸を持っています。いまでこそESGは業界標準になりましたが、個人レベルではむしろ古典的な評価基準かもしれないのです。

そんな個人投資家層を「ファン」として惹きつけよう、という方法の一つが株主優待です。株主優待自体は正当化できるということをここまで説明してきましたが、その中でも優れたものとそうでないものはあります。優れた株主優待と感じるのはまず、自社の製品やサービスを優待の内容とするものです。これらは商品のプロモーションと考えれば、コスト的にも無駄にはなりません。食品や日用品、小売りや外食といった業界に多いでしょう。

最近は優待品をもらわずにその分を寄付する、という選択肢を設けるケースも増えてきているようです。また、例は少ないかもしれませんが、地元貢献型の優待も有ります。企業の地元の名産品などを株主に配るというもので、利益の一部を地元に還元するのは好ましいと思います。

株主優待を重視して銘柄を選ぶのは、邪道と言えば邪道でしょうが、会社のためになると思えば気にすることはありません。ただ、本業と関係のない豪華な賞品を配ったり、金券・割引券の類を出し過ぎたりしているケースは要注意です。株主優待は企業にとって義務でも何でもありませんから、業績が悪化した時などはやめてしまうと考えるべきです。余裕がないのに株主を優待している場合ではありませんから。株主としても、何が会社のためになるのかという視点を忘れてしまってはいけませんね。

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