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投資信託っていっぱいありすぎる [投資スタイル]

私は特定の金融商品を奨める、ということは基本的にはやらないわけですが、先日セミナーに参加してくださった方が、投資信託の数が多すぎて選ぶことができず、そのせいで一歩を踏み出せない、ということをおっしゃっていました。

おっしゃることは大変よく分かります。何せ投資信託の数たるや、公募されているものが6200本ほどあるのですから。投信の数が多すぎるというのは、実際困った事態なのです。困るんなら減らせばよいではないか、と思われるでしょうが、ことはそう簡単ではありません。投資信託はしっかりと法的に守られた金融商品ですから、一旦できたものをやめるには、それなりの手続きが必要です。そのためにはコストがかかるのです。

全体の本数は多くても、中には規模の小さい投信も多く、実質的にきちんと運用されているのか不安を覚えるものもあります。あまりに規模が小さいと、運用が困難になるからです。特定の投資信託に意見を求められる時に、一番気になるのはこの点です。この投信、良いと思いますか? と聞かれて、運用方針や銘柄選択などに問題が無いように見えても、この先の資金の流出入までは、事前に評価できません。

今後長きにわたってきちんと運用される投信かどうか、予想する方法が特にあるわけではありませんが、過去の経験からはいくつかのことが言えると思います。

残高が減りやすいパターンの代表格は、特定のテーマを設定した投信です。こういう投信、とても多いのではないでしょうか。流行りのテーマ、例えば最近ならば「ロボット」「AI」「女性応援」「フィンテック」「インバウンド消費」等々、経済のトレンドや時流に乗って、明るい未来を感じさせるものがピックアップされています。誰もが「成長しそう」「将来にわたって続きそう」と思うテーマの、どこがいけないのでしょうか。

こうしたテーマに魅力を感じる人は多いので、投信を販売する側から見れば、売りやすい商品と言えるでしょう。販売会社が売りやすい商品を売ろうとする。まあ当然と言えば当然ですね。そして結果的に人気商品となって、多くのお金が集まったとしましょう。集まったお金を任されるファンド・マネージャーは、与えられたテーマの銘柄に投資します。これも当然ですね。でも、そのテーマの投信がよく売れるぐらいですから、そうした株式の銘柄も、当然人気化して高くなっているのです。

常に、というわけではありませんが、特定のテーマのファンドがよく売れる時期というのは、そのテーマの銘柄は、一旦ピークに近くなっていることが多いものです。それも考えてみれば当然です。もちろんテーマに実体があり、長期的なトレンドとして間違っていなければ、株価が一旦ピークを打って下がっても、また上がって戻って来ることが期待できます。ですから、運用が長く続くことが大切です。

しかし、実際に起きていることはちょっと違います。テーマには当然流行りすたりがあり、時には半年やそこらで人気が離散してしまうこともあります。販売会社で人気商品を奨めた販売員は、同じように次の人気商品を奨めに来るでしょう。新たな人気商品を買う現金が無ければ、価格が下がって不安になっている旧来の投信を売るように勧めるでしょう。こうして人気とともに資金の流入した投資信託は、人気の離散とともに資金が流出し、規模が小さくなってしまうのです。

お金を預かるファンド・マネージャーにすれば、高くても買わざるを得ない、安くても売らざるを得ない、という運用を強いられることになります。幸いその手のファンドを運用したことはありませんが、運用する立場としては、なんとも残念なことです。そうやって小さくなってしまったファンドは、あまり手をかけられることなく半ば放置されている事態が疑われるわけです。「ゾンビファンド」なんて呼ばれたりもしますね。その一方で、流行を狙った投信がまた出てくるので、数ばかり増えてしまうということなのです。

そもそもテーマ株ファンドというのは、世間一般の「人気」に沿って銘柄選択の範囲を限定するので、運用のかなりの部分を、要するに素人の個人にやってもらっているのと同じです。せっかく報酬を払ってプロに運用を任せているのに、そのプロは、どの産業やセクターが「買い」なのか考えなくていいわけです。プロに運用を任せているというより、銘柄選択だけを任せているんですね。

テーマ型の投信はそういうものだ、ということで悪いとは言いませんが、短い期間で運用に支障が出るほど小さくなってしまうとすれば、そういうファンドは避けるべきでしょう。販売員が熱心に奨めるテーマ型の投信は、そういうケースが比較的多いと言えるんじゃないでしょうか。

では、長く続くファンドを探すにはどうすればいいのか・・・。かなり長くなってきたので、それは回を改めましょう。

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バリュー系の銘柄 [投資スタイル]

先日、とあるセミナーでお話した時、「バリュー系の銘柄、というのはどういう意味ですか?」という質問を頂いたので、ここでも簡単にご紹介したいと思います。質問なさった方は、ご自分の保有するファンドの定期的な運用報告の動画で、ファンドマネージャーが「バリュー系の銘柄を増やした」というのを聴いたのだけれど、それはどんな銘柄を増やしたということなのか分からなかった、ということでした。

私はその動画を見ていませんし、実際どのような銘柄を増やしたのか存じませんが、一般的に「バリュー株」と言えば、「割安株」ということになります。ただ、割安な株の定義はひとつではありません。基本的には利益、純資産、配当などが指標となりますが、それらを組み合わせたり加工したり、そこに運用者の創意工夫が盛り込まれる余地があります。

中にはかなり「バリュー株」を拡大解釈して、「このくらい成長するのだから割安だ、だからこれもバリュー株だ」という説明をする運用手法も目にすることがありますが、あまり拡大解釈しすぎるのは誠実ではないと私は思います。

私の考える純粋な「バリュー」の要点は、「成長性に対する期待を織り込まないこと」です。成長性というのは、予想するのがとても難しいものです。それに対して、足元で上げている利益、今手にしている資産、前期や今期の配当をもとに株の価値を分析するのは、難しいことではありません。そうした確実な指標に基づいて評価した株価が割安である場合、それは「割安株」「バリュー株」でしょう。

何かすごい技術を持っている、とか、どんどん成長しそうな市場に商品を供給している、とか、そういった銘柄は「成長株」で、ほとんどの場合、株価は高い評価を得ています。成長株は予想されたとおり、またはそれ以上に成長することが求められます。なぜならば、株価は既にそのつもりで高くなっているからです。もちろん本当に成長する企業は、業績が何倍にもなりますから、買う時点で株価が高くても問題ありません。問題なのは、本当に成長するかどうかなのです。期待を裏切れば、たとえ利益が伸びても株価が下がってしまいます

これに対し「バリュー株」は、ピカピカのストーリーを持たない株です。時代遅れのビジネスに見えたり、作っている製品が何の変哲もない物だったり、成長性が感じられない銘柄であることが普通です。あまり期待されないので、株価の評価も低いのです。ですから持っている資産の価額よりも株価が安かったり、配当利回りがとても高かったり、ということが起きるのです。企業が高成長することは、やはり滅多にありませんが、期待値が低い分、期待を上回る業績を上げることは難しくありません。期待を上回れば、その分株価の評価は上がるのです。

さて、ご質問の方は「バリュー系の銘柄」とおっしゃいました。どうやら純粋の「バリュー株」ではないのでしょうね。成長期待は織り込んでいるけれど、ピッカピカのストーリーではありませんよ、というくらいのニュアンスなのではないでしょうか。

写真は本題とは関係ありませんが、先日見た天野山金剛寺の枝垂桜。

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