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新興国投資は冒険的投資 [投資スタイル]

先日友人と食事をした際、話題がトルコリラ新興国通貨のことになりました。まあこれだけ話題になっているから自然な流れではあります。そこで友人が言うには、トルコリラというのは三十数年の間に価値が50万分の1くらいになっているというのです。その場は、80年代にトルコリラで借金してアメリカの不動産買ってたら凄かったね、トルコの大金持ちとか、本当にやってるだろうね、なんていう話で盛り上がったわけです。

こういうエキゾチックなものの値動きは見慣れている私でも、さすがに50万分の1というのはマジですか、と思い、何とか裏をとろうと検索してみました。すると、1991年の年初からトルコリラの対円レートを載せている「為替ラボ」というサイトが見つかりました。また、Wikipediaの該当ページには、1974年から2004年8月までの対ドルレートが載っています。信頼性についてはよく分かりませんが、これしかないのでこれらの情報が正しいという前提で継ぎ合わせ、簡単に試算してみました。すると、1987年末からは約7200分の1、1979年末からでは34万5千分の1、さらに1年遡るごとに、59万5千分の1、62万8千分の1、という結果が出てきました。過去40年で見ると、50万分の1は誇張ではなかったのです。

誤解を招くといけないので触れておきますが、これだけ通貨が下がる間には、多分激しいインフレになっているでしょうから、通貨価値が下がっても、トルコの資産が同じように下がっているわけではありません。ここで「購買力平価説」の解説をするのはやめておきますが、インフレ率が高い国の通貨が下がる、というのが基本です。でも、海外から外貨という形で投資すると、通貨価値の下落がほぼそのまま効いてくるでしょう。

私の場合、初めての新興国投資は80年代末ごろのインドネシア株なので、かれこれもうすぐ30年、新興国マーケットを見てはいるわけです。その間アジア金融危機がありましたし、中国経済の高成長、新興国株の急上昇からリーマンショック、と大きな動きを経て今に至っています。そして一応達した結論は、「新興国投資でリスクに見合ったリターンを上げるのはとても難しい」ということです。


過去20年くらいの間で最も成長が華々しかったのは、多分2000年代初頭からの中国経済でしょう。もし良いタイミングで投資できていたら、結構利益が上がっているに違いない、と思いませんか? リーマンショック直前の新興国バブルが始まる前に上海の株価指数に投資したとしたら、どうなっているでしょう。

そこで2000年ぐらいからの株価指数のチャートを眺めてみました。そこから新興国バブルが来る前までの高値は2001年で2200辺り、安値は2005年で大体1000ぐらいです。その中間あたりで買えたとしましょう。すると1600ですね。直近の上海株価指数は2750ぐらいですから、ごく単純に70%の上昇です。

同じように日経平均がどうだったか試算してみましょうか。同じ時期の高値と安値の平均は約14000、そして直近は22500辺りですから、上昇率は60%です。先進国のなかで全然パッとしないはずの日本株でも、上海の指数と大して変わりませんね。中国に投資して負っているリスクを考えたら、結果的に割のいい投資であったとは言い難いのではないでしょうか。為替はこの間それほど大きく動いていませんが、それは結果論、時として大きな変動要因になります。資本主義経済と言っていいのかどうか分かりませんから、政治的不透明感も強く、数値化し難いカントリーリスクがあります。

最も上手く行ってそうに思えるマーケットでこんなものです。もちろんそれは結果論ではありますが、新興国が難しい理由はいくつか考えられます。株式市場が未発達なので、上場株に偏りがある、流動性が小さい、政治の介入が起こりやすい、政情不安が起きやすい、などの可能性があります。また情報が得にくく、投資に必要なデータが揃いません。海外の投資家、特に個人投資家に情報が届くころには、売買のタイミングをとうに過ぎてしまっている可能性も高いと思います。

私個人は、アジア金融危機で保有していたアジアの株も大きく下がり、羹に懲りて、ではありませんが、その後は新興国投資熱がすっかり冷めて、静観しています。インドネシアに最初投資した時に考えたことは、別に間違ってはいませんでした。人口が増える、資源も豊富、だから成長ポテンシャルが高い、等々。ただ、株式投資はそれだけで上手く行くようなものではなかったということです。アジア危機で潰れてしまったらしい(情報がないのでよく分かりません)銘柄もあれば、過去10年で回復して10倍ぐらいになっている銘柄もあります。いずれにせよ、リスクとる価値は無かったな、というのが正直な感想です。

新興国投資は冒険的投資。楽しいけれど、老後の蓄えと思って手掛けるには向いていないでしょう。通貨が50万分の1になってもらっちゃ、もう笑うしかないですね。


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