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貿易戦争?どのていど悲観すればいいのか [市場と経済]

世界的に株式市場は、年明け以来何となく順調に戻して来ています。米中貿易戦争か、すわ一大事、とばかりに年末辺りは急落したものの、悲観のし過ぎを反省しているかたちです。何ごとも行き過ぎはいけませんが、景気の勢いも企業収益も下降気味で、やはり今のところ、あまり投資環境が明るいとは思えません。米中貿易戦争であるとか、冷戦の再来であるとか、今の時点ではそういった表現は大袈裟に過ぎるでしょうが、ベルリンの壁崩壊以来ひたすら進展してきたグローバリゼーションの流れに転機が訪れている、というのは大方の認めるところではないでしょうか。

信頼のなかったところに信頼が築かれ、物もお金も容易に東西の壁を超えるようになった90年代。それは中国の急成長を援け、一方世界は大いにその恩恵を受けたわけです。信用のあるなしがそのまま金利に現れるように、ビジネスというものは、信用があるかないかでかかるコストが大きく違ってくるものです。社会主義に覆われていた経済圏が資本主義を受け入れ、過去には信用できなかった相手が信用できるようになったことのインパクトは計り知れないものがあったに違いありません。

90年代は、株式市場も世界的に大幅な上昇を記録しました。主要市場でここに加われなかったのは、バブルの後始末に追われていた日本だけでしょう。2000年代に入ると中国はWTOに加わり、将来は資本主義・自由主義経済の仲間同士となるのが自然の成り行きのように思えました。だから中国は基本的に信頼できる相手という前提で、90年代以降の経済は進展してきたはずです。しかし今やその前提は崩れ、信用は所与のものではなくなってしまったようです。

貿易交渉が順調に進展すれば、行き過ぎが修正されたり緊張緩和が図られたりして、ビジネスの条件は改善するでしょう。しかし、歴史の流れが再び向きを変えるということにはならないのだと思います。過去のようなグローバリゼーションの進展は、もう見られないのかもしれません。それを誰もが感じるようになったのは、多分アメリカの大統領がトランプ氏に替わったころからでしょう。しかし実は、リーマンショック辺りを機に変化は既に始まっていた、という記事を、先月の英エコノミスト誌で見ました。(1月26日号「Slowbalization」)

それによると、GDP比で見た貿易額や国境をまたぐ投資額・融資額は2008年に頭打ちとなっています。急激に伸びてきた中間財の輸入額、多国籍企業が海外で稼ぐ収益などもそうです。それまで企業が構築してきた国際的なサプライチェーンの活動は、2008年までにピークアウトしていたということでしょう。人々の往来や小包のやり取りは伸び続けているということですから、国境をこえた個人の消費行動は、まだ勢いがあるようです。

株式市場を振り返ってみると、日本以外ほとんどの市場が上昇した90年代に対し、2000年以降、特にリーマンショック以降のパフォーマンスは、ネット世界のリーディング企業を擁する米国と、統合されたユーロの恩恵を一身に集めた形となったドイツが突出して見えます。リーマンショック前のピークをしっかり超えているという意味では日本も健闘してはいますね。

GlobalizationがSlowbalizationに、ということなので、今のところ逆行しているわけではないのでしょう。そして最終的な消費者は世界中から物を買い、海外旅行をする、という傾向を今も続けています。これから観光大国を目指し、働き手も海外から来てもらおうとしている日本も、まさにその流れの中にいます。世界中の国際関係がギスギスして感じられるなかで、経済の長期展望もつい弱気に傾いてしまいますが、グローバリゼーションが止まってしまったのか、形を変えて進展しているのか、それは表現の仕方の違いなのかもしれません。あまり悲観に傾きすぎぬよう自戒しつつ。

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超ハイリスク・ハイリターンな成長株 [株式の個別銘柄]

株式市場では「サンバイオ」株が昨日まで4日連続ストップ安、今日も下げて、その間だけで株価は4分の1ぐらいになってしまいました。凄いですね。この値動きを見て心臓がバクバクしてしまう人は、やっぱり買わないほうがいいですね、こういう純粋に成長期待のみで株価の形成されている銘柄は。

では、こういう極端なほど乱高下する成長株は、単なるギャンブルの対象なのでしょうか。「投資価値」についてはどう考えればよいのでしょうか。

周知のとおり、この会社は「夢の薬」を開発しているといいます。製品はまだできていないので、どこから売り上げが来るのかよく分かりませんが、とにかく製品ができるまでは赤字が続きます。でも首尾よく開発が成功すれば、莫大な利益が手に入るはず、という状態の銘柄です。

手元の四季報で財務情報を眺めますと、総資産は147億円、自己資本は107億円、有利子負債は27億円。これだけ見れば、悪くないですね。自己資本に対して負債は多くないし、それほど危ない会社には見えません。この107億円の自己資本が、このままでいくと毎期30億円とか40億円とかいうペースで減っていくわけです。開発に成功すると期待されている限り、開発費が足りなくなればまた調達することになるのでしょうが、今ある自己資本で3年くらいは持つことになります。

今日の2600円近辺という株価の水準は、急上昇の始まる前、あまり株価の動いていなかった2018年前半の水準も下回っています。今日はようやく売買もできているようですし、当面はこの辺で落ち着くのかもしれません。この株価で計算すると、時価総額は1290億円くらいになります。147億円という総資産、107億円という純資産(自己資本)に、1290億円というお値段がついているわけです。倍率にすれば総資産の8.7倍、純資産の12倍です。

これを高いと感じるか高くないと感じるか、それはひとえに、薬の開発の成功をどの程度信じられるかに依るわけです。この先どのくらい時間がかかるかにもよりますが、そこそこ現実的な評価のようにも見えます。

いずれにしても、開発が上手くいくかどうかが全てを決する、超ハイリスク・ハイリターンであることには変わりありません。こういう銘柄は、ゼロになってしまう可能性まで想定して心の準備をしておけば、そう悪い投資ではないとも言えます。株価が上がる時のスケールも、桁違いに大きいでしょうからね。そんな可能性がちょっとでもあるなら買わなきゃ損、という投資家がいても不思議ではありません。ただ辛抱強くなければ投資はやめた方がいいでしょうね。なにしろ製品はまだできていないのですから。

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