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エイチ・アイ・エスの株主総会 [株主総会]

昨日はエイチ・アイ・エスの株主総会がありました。
10月決算の企業はなかなか無いので、この時期にポツンとあるこの総会は、何度か出席しています。例の肺炎の影響なのか、今年は出席者が少ないように思いました。
こういう若い会社は熱心な株主さんたちが活発に質問や意見をなさるので、それが興味深くて学ぶところも多々あるのですが、昨日はちょっと盛り上がりに欠けたかな。

事業報告の最初に、「観光バスの安全性の確保」というトピックを持ってくるセンスは好ましいですね。新しくて派手なことをひけらかすのではなく、地味で大切なことを大切だと。そういう何でもないように見える事業が、往々にしてキャッシュカウだったりします。

Q&Aの最初は、宮城県に建設予定のバイオマス発電所の件についてでした。このプロジェクトが国際的な環境団体から反対運動を受けている、という話。実は不勉強なことに、私、全くこの件について知りませんでした。この数人あとにもう一人、別の株主がこの件について質問したんですが、それを聴いていると、国際的に大問題になっているような話です。そんな大問題、どうして気づかなかったんだろう、と思いながら、帰宅後に検索してみました。

社名のニュース検索では見つからず、「エイチ・アイ・エス 発電所」でやっと出てきた記事によりますと、この発電所の発電燃料はパーム油で、それが環境に悪いと非難されているというのです。バイオマスというと、生物由来の廃棄物というイメージでしたが、パーム油も含まれるんですね。廃棄物ではなくても生物由来だから再生エネルギーには違いないのですが、燃料として使うようになると、パーム油生産のために森林破壊が進み、結局環境に悪いのだ、というわけです。「環境」の世界では、どうやら市民権を失いつつある発電燃料のようなのです。

エイチ・アイ・エス、というか澤田社長は、「エネルギー」の事業としてのポテンシャルを感じ、「再生可能エネルギー」の利用を進めなくてはいけないという社会的ニーズもよくわかって参入しているのでしょうけれど、必ずしも「環境」事情に通じてはいないように見えます。せっかく発電事業に関わろうというのに、それがパーム油というのは、私の素人感覚でもちょっと違うような感じがします。今のところ事業をやめる予定にはなっていないようですが、考え直す必要があるんじゃないでしょうかね。

余談ですが、この件に質問した2人目の株主は、多分環境問題に関心の高い人なのでしょう。普段から関連のサイトを見ていて、エイチ・アイ・エスの発電所の問題は国際的な大問題である、と感じたのだと思います。しかし一般の人々はこの問題をほとんど知らないんじゃないでしょうか。よく言われることですが、インターネット、特にSNSの普及によって社会が分断されるというようすが垣間見えた出来事でした。

現状手がけているエネルギー事業は、いわゆる電力の卸市場から市場価格で、一部は大手電力会社から相対取引で買ってきた電力を小売りしているだけのことで、そんなにエキサイティングなビジネスという感じもしませんけど、やはり再生可能エネルギーを最終的には取り扱いたいと思っているはず。注力するつもりならば、しっかり環境保護の事情に通じてほしいものですね。

今回の総会での決議事項の一つは、グループを持ち株会社の下にぶら下げる形にまとめる組織の変更でした。そしてそれに伴う定款の変更。ついでに色々と新規事業が付け加わっています。で、列挙された事業を順に見ていくと、一番最後にこんな文言が。
「上記、各号に掲げる以外の事業」

ん? これは何を意味するんでしょうか。字面通り解釈すると、「色々列挙してきたけど、最後に、ここに書いてないこと何でもかんでも」を定款の最後に書き加えていることになります。

で、何を意味するんですか、と聞いてみた。それに対する答えは、事業環境の変化が早いから、新しい事業を始めるときに定款を変更している暇がない、というわけです。事業を始めた後で、事後承諾的に定款を変えるということなんでしょうが、定款の文言によれば、定款変更しないままにしてもかまわない、ということになります。

ともかく事情は分かりました、ということなんですが、これも帰宅してからググってみたら、やはりISSが反対を表明してました。ISSというのは議決権行使の助言をする会社。ここが反対しているということは、助言を求める顧客に対し、エイチ・アイ・エスの定款変更の議案には反対すべきである、と助言しているわけです。こんな定款の条文を見ても、エイチ・アイ・エスという会社は、ワンマン経営の様相をあれこれ呈していますね。

昨今はガバナンス経営が大事だ、というのが時代の流れでして、それは正論なのですけれど、一個人投資家の思いとしては、株式市場にお行儀のよい役所みたいな会社ばかり並んでいるようになっちゃ味気ない、というのが正直なところです。うちはワンマン経営です、という会社が上場していてもいいんじゃないの、と。一番効率よく成長する会社は、優秀な経営者がワンマン経営している会社である、というのは事実です。その代わり、経営者が暴走したり判断ミスをしたりすれば、業績に大きく響くことにもなる。それのリスクを分かったうえで投資をするというのは当然あっても良いと思うのです。エイチ・アイ・エスとはそういう投資先の一つだということですね。

昨今の伝染病騒ぎについての質問も当然ありました。今回のことも悪い循環にあるには違いないが、その間仕入れ値も安くなりますからね、というのが回答。韓国向けのビジネスも、今は最悪期を脱して回復基調だそうです。当面はハワイやグアム向けを頑張る、という話でした。

今回のことは旅行業に限らず、経済にかなり悪影響があるかももしれませんね。悪条件というものは常に起こりますし、仕方のないこと。心配なのは、売上の上昇傾向は続いているのに、利益がここ4~5年くらい頭打ちに見えることです。観光業の伸びしろはまだ大きいと思うんですが…。

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今年もよろしくお願いします [市場と経済]

2020年が稼働を始めました。残念ながら、明るい希望に満ちた新年、というイメージではないようですね。スパイ映画まがいの逃亡劇で幕を開け、中東情勢を巡る不安感も漂っています。ただ、この手の暗さは最近始まったことでもなく、アメリカに現大統領が登場して以降、はっきりと感じられるようになりました。大統領が事態を引き起こしたというより、時代が生んだ大統領ということなのでしょう。

ベルリンの壁が崩壊して以降の20年間は、概ね明るい時代だったと言っていいと思います。世界は一つの方向に向かっていく、という一体感に包まれていました。もちろん、壁の向こうから来た人々にはどう見えたのかわかりませんが、私たちは、彼らも私たちと同じマーケットに参加して、同じ価値観を分かち合えるようになると感じていました。そして世界的にマーケットは拡大し、実際に世界は豊かになりました。

それが今、世界は逆にばらばらになろうとしています。リーマンショック以降だんだんと富の偏在が目立つようになり、経済が拡大しているのに豊かにならない、と多くの人が感じるようになりました。明るい希望だったグローバル化が、敵視さえされるようになってきました。世界を豊かにしてきたマーケットの、負の面が誰の目にも明らかになってきたのです。

資本主義、または市場主義の経済は、自由に任せると貧富の差が必然的に拡大するもののようです。一旦差がつくと、大きいものにとって競争条件はより有利になります。規模の経済が利くでしょうし、財力があれば、より大きなリスクをとることができます。リスクをとることができれば、成長するチャンスも得やすくなります。ですから勝者が勝ち続け易いし、大きなプレイヤーのいる市場には新規参入が難しい、ということにもなるでしょう。

近年は、経済のグローバル化で市場が大きくなっている分、貧富の差もスケールが拡大しているということなのでしょう。それに加えて新しい産業では、勝者が勝ち続ける傾向が一層強くなっています。そしてマーケットシェアの寡占が、そのまま富の分配にも反映しているかのようです。もちろん、世界がばらばらに動けば富が平等に行きわたるというわけではありませんが、これまでのように、市場のメカニズムを信じることができなくなっているのは確かです。

企業経営の場でESGが強調されるのも、市場メカニズムの修正の一環と考えることができます。環境や社会的価値を守ることによって企業の価値が高まるので株主にも恩恵がある、と従来の市場のメカニズムの枠内で説明されるのが普通かもしれませんが、私は少しそれには無理があるような気がしています。経済的効率をひたすら追求する「市場」に任せすぎると弊害が無視できないので、それをコントロールしようするのが、ESGやSDGsの推進といった動きだと、私は捉えています。

一体化しつつあった市場を分断し、効率を犠牲にして社会的価値を守る、という流れに世界経済は入っている、これが現状に対する私の理解です。去年からの弱気の虫は、元を正せばこういうことです。弱気な話を長々としても面白くないのでこのくらいにしますが、当分の間はこんな感じが続くと思われるので、年初にあたり整理してみました。あまり明るい気分ではありませんが、どんなときにも資産運用は続いていきます。投資する対象はたくさんありますからね。今年もよろしくお願いします。

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