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ソフトバンクってどう思います? [株式の個別銘柄]

こういう時の「ソフトバンク」は孫さんが社長を務める「ソフトバンクグループ」を指すのでしょうね。電話の子会社が上場したのでいちいち区別が必要になって面倒です。(笑)どちらのソフトバンクも、株主総会のメモを書こうと思いつつそのままになってしまったので、改めて銘柄についてコメントしておきます。

電話のほうのソフトバンクでしたら、ドコモやKDDIとやっていることはそれほど変わりません。要はモバイル通信事業です。特徴的なのは、資本効率が異常なほど良いこと。ただそれは自己資本比率が低いことの結果なので、総資産で見た効率は、むしろKDDIに負けてます。

そうはいっても資本効率は株主にとっては重要。財務体質の弱さというリスクを取れるのならば、配当利回りが高くてよい投資対象ということになるでしょう。電話という事業は、ユーザーの皆さんのほとんどが毎月まじめに通信料を払いますから、普通にやっていればキャッシュが無くて困るという事態は起きませんし、財務体質について私はそれほど気になりません。

問題は親会社のソフトバンクグループのほうですね。よく分からないけど危なそう、という印象を持つ人は多いでしょう。普通に財務指標をみれば、自己資本比率は低いし有利子負債は多い。昨年度のように急に1千億を超える赤字を出したりする会社です。決算書の類を眺めてみても、情報開示に精一杯務めていることは伝わってくるものの、多彩な資金調達のせいか、素人目には何が起きているのか分からないというのが実際のところです。個人投資家としては、詳細に理解しようと考えるのは、時間の無駄かもしれません。

ソフトバンクグループは、業種は何かといえば「投資会社」です。今も「売り上げ」の多くは子会社ソフトバンクの通信事業から上げていますが、投資会社の「売り上げ」というのはなんとも微妙な位置づけです。「利益」も同じく。それよりも、投資会社なのですから投資活動の成果を評価するのが筋というものです。

会社によるプレゼンテーションではいつも、「株主価値」という用語が使われます。それは「投資対象として保有している会社の時価総額の合計から純負債を差し引いたもの」を指します。時価総額ですから、上場されていれば、市場による評価ということになります。市場での価格、つまり株価が上下すれば、価値が増えたり減ったりして、それが業績に反映されます。

この「株主価値」と比較しますと、ソフトバンクグループの市場価値、つまり時価総額は、ほぼ常に低くなっています。だから割安だ、と孫社長はおっしゃるわけですが、この「株主価値」と時価総額の差が「リスク」の値段ということなのでしょう。その「リスク」の正体は、簡単に言ってしまうとひとつにはその「株主価値」に対する不安です。

「株主価値」の中身はアニュアルレポートなどに案外分かりやすく開示されていて、負債を含めた全体の、約半分が中国企業のアリババです。残りの半分は携帯電話会社のソフトバンクとTモバイル、マイクロプロセッサーのアーム、そして「ビジョン・ファンド」です。ビジョン・ファンドはともかく、あとはどの企業も盤石な大企業です。それでも株価の上下で業績が大幅に左右されてしまうことには違いありませんが、ひどく不安になる必要もないように見えます。

ビジョン・ファンドは6月末の決算書によれば、「株主価値」の約11%。ファンド自体はもっと大きいわけですが、ソフトバンクグループの持ち分はそんなところです。ここには将来有望と思われる世界中の新興企業が、6月末時点で86社あるそうで、もちろんほとんど聞いたこともない企業ばかりですが、中には皆さんご存知のUberや、TikTokのバイトダンスも含まれますし、SlackやOYOなんていうのも聞いたことがあるかもしれません。

ビジョン・ファンドはもちろんハイリスクです。成功する企業も潰れる企業もあるでしょう。去年は孫社長が入れ込んでいたWeWorkの経営がどうもダメらしいという話で、その分の価値ははげ落ちたわけですが、ソフトバンクグループの株価はそれほど反応するでもなく、落ち着いたものでした。投資先のハイリスクははじめから分かっているとでも言いたげな株価の動きです。

評価が低くなる理由のもう一つは、初めに触れた「よく分からない」、ということです。投資に際して投資対象が「よく分からない」ということは、「リスクが高い」とほぼ同じ意味だと言っていいと思います。(だから説明されても理解できない金融商品を買ってはいけない、というのは鉄則です。)市場はリスクの高いものを厳しく評価しますから、株価が安くなるのです。

決算書がよく分からないというだけの話ではありません。高い投資成果を狙っているのですから、当然負っているリスクも高いわけで、どのようなトラブルが降ってくるか分からないという不安もあります。例えば決算書上の負債、ある日気が付いたらひどく膨れ上がっている、なんてことにならないだろうかとか、どこかから権利関係で訴えられて困窮することはないんだろうかとか、色々と危ないシナリオが思い浮かぶわけです。

それでも投資するならば、何を拠り所に、何に期待して投資するのでしょう。個人投資家の中には多分結構な数の「孫正義ファン」がいて、彼の手腕に期待して投資していると思います。何しろ過去にはヤフーアリババなど、大ヒットの実績がありますから。何やってるか分からないけどとにかく信じてます、という感じ。個人投資家ならそれでも構わないと思います。但し、減ったら困るお金で買ってはいけないだけ。自分がリスクを取れるかどうか、確認したうえでどうぞ。

私も少しソフトバンクグループの株式、保有しています。昔はソフトバンクは好きではなかったのです。説明会に行っても社長の話は、とにかく私を信じて投資してください、という印象で、そんなの信じられないでしょ、と思っていたわけです。

今でも半信半疑のままですが、成長のリスクを目いっぱい負って投資し続ける姿は、今の日本に最も欠けているものです。お金はじゃぶじゃぶあるのに、リスクをとる人が居なさ過ぎて日本は低迷を続けてきました。この日本の金融の歪みが、ソフトバンクグループの投資行動に反映されているんじゃないか、という気さえします。

リスクがどの程度あるのか、正直なところ私も自信がありませんが、まあいいではありませんか。成長が期待される世界中の新興企業に投資するなど、一介の個人には所詮できないことなのですから。ビジョン・ファンドを介して、成長のリスクを負うという活動に、少しばかり参加しようということなのです。但し、繰り返しますが、自分がリスクを取れるかどうか、確認したうえでどうぞ。


ご参考 → 2018年の株主総会メモ
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