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トップダウンとボトムアップ [投資スタイル]

特に年末の話題というわけではありませんが、長期投資のための銘柄選択について。

銘柄選択して投資する手法を、「トップダウン」と「ボトムアップ」というふうに分類することがあります。トップダウンというのは、経済や社会のトレンドを予想して、そこから導きだされる対象銘柄を選ぶ、という方法。一方のボトムアップは、個々の企業を分析してよい会社を選ぶ、という方法です。もちろん、トップダウンでも良い企業を選ぶことは大事ですし、ボトムアップでも成長産業に属しているほうが成長力や収益力は高いでしょうから、結果的に投資する先は同じかもしれません。文字通り手法の違いです。

たとえば今、デジタル化に関わる企業や巣ごもり需要を満たす企業の株式が人気です。関連企業だというだけで買う投資家もいますね。これは典型的なトップダウンです。こうした人気テーマによるトップダウンは、あまり長続きしないこともよくありますが、あるていど長期的に有効なテーマもあります。高齢化ですとか、バイオテクノロジー、環境関連など、人気が出たり引っ込んだりしながらも持続しています。

そのほか、景気のサイクルによってセクターを選ぶトップダウンもあるでしょう。景気が良くなるというシナリオに基づいて素材や機械のような景気敏感株を買うとか、逆に景気が悪化するから小売りや食品などの業種を選ぶといったやり方です。特定の技術やブランドを目的に投資する場合は一見ボトムアップのようでもありますが、その技術やブランドを持っていればどの会社でもいい、ということであれば、むしろトップダウンと言うべきでしょう。また国際的に、特定の国の経済成長を見込んで投資する、というような投資もトップダウンということになります。

ボトムアップは個別企業の経営からスタートします。属している産業ももちろん重要ですが、同じようなビジネスに携わっていても収益力が全然違う、という例はいくらでもあります。業界の中でも常に利益率が高い、成長性が高い、そういう企業を選ぶのです。この時一番重要なのは経営の体質であって、ビジネス環境の良し悪しや市場の成長性は二の次です。

経営体質の良し悪しは、経営指標で知ることができますが、良い経営がなぜ良いのかという分析は時として困難で、「企業のDNA」という説明で片づけてしまうこともあります。それが組織全体に根付いていることもあれば、トップの采配でそうなっていることもあるでしょう。

10年以上の長期投資のために銘柄選択するのであれば、ボトムアップのほうが向いていると、私は考えています。先ほど長持ちするテーマもあると書きましたが、多くの場合テーマは移り変わっていきますし、そもそもそんなに長期的な市場予測など、たとえできてもあまり当てにはなりません。もちろん企業も変わります。良かった企業が悪くなることもあるでしょうし、環境が大きく変わって対応できないこともあるでしょう。万全な投資手法というものは有りませんが、市場の長期予想よりは、優秀な企業の良い経営が続くと予想することのほうが、どちらかと言えば確実というわけです。

経営のすぐれた企業は、ビジネスに将来性が無くなれば、別の道を探ります。そうやって厳しい環境を切り抜け、時代の流れに対応していくのです。ですから、一旦経営の優れた企業を見つけて投資することができれば、大船に乗ったようなものです。自分のような一介の投資家よりも、優れた企業の経営者のほうが、事業の将来を見極める眼はずっと確かでしょうからね。

今の日本株市場で言えば、例えば日本電産。エレクトロニクス産業向け中心の部品メーカーでしたが、とっくに車載用に舵を切り、M&Aを駆使してその比率を高めています。また、少し地味ですが、主力商品として写真フィルムという、将来性の絶望的な部門を持っていた富士フィルム。医療向けなどの部門を強化し、写真関連の売り上げは全体の15%にも満たないところまで低下しています。

逆に、せっかく経済や市場の将来を正しく予想できても企業の経営能力が高くなければ、株式への投資収益は期待ほど上がりません。まず思い当たるのはネット通販。もうずいぶん昔のことですが、これからはネット通販が小売りを席巻する、と思って、当時圧倒的な国内シェアをすでに獲得していたトップ企業に投資しましたが・・・楽天ですね。さすがに損が出たりはしていませんが、ネット通販のトップがこれ? という投資成果。早い時期にシェアを拡大し、市場のポジションは申し分なかったはずなのに、Amazonにここまで攻め込まれるまで、一体何をやっていたんでしょうか。楽天的で寛大な私は、オンライン・ビジネスの可能性が広がり続ける間は株主を続けようと思ってはいますが、全く残念なことです。


さて、今年もあと数時間を残すばかり。「掉尾の一振」という表現を、証券会社に入って教わりましたが、この表現は相場用語なのでしょうか。ガラの悪い用語の多いこの世界にしては、ちょっと上品な感じですね。11月から暮れにかけては、この表現に相応しいマーケットでした。バブル気味だとは思いますけれど、結構続きそうな気がしています。

どうぞ良いお年をお迎えください。

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年末に当たって思うこと [投資スタイル]

年末を控えて、ポートフォリオのレビューをなさったという方もいらっしゃるかと思います。ある程度定期的に資産運用の反省会をやろうということであれば、1年の終わりというのは良い機会です。ただ私自身は、お手本になれるほどきちんとやっているとは言い難い、というのが正直なところです。

機関投資家がやるように、銘柄の保有割合を調整するような作業は、やるに越したことはないのでしょうが、それよりも確認しなくてはいけないのが、年間の取引で思った以上の売買益が出ていないか、ということです。売買益がたくさん出てしまうと、払う税金も多くなりますからね。

個人投資家にとっての大きな課題は、税金を常に考慮しなければならないということです。機関投資家のファンドマネジャーであれば、銘柄の良し悪しやポートフォリオのバランスを考えて売り買いを決めていればよいのですが、個人はそういうわけにも行きません。ですから、リバランスのつもりで売ってみたら大きな売買益が出て、予想外の額を納税することになるという事態もあり得るわけです。

売買益にかかる税金は、売って利益が出れば必ずいつか払うもので、余計なことを考える必要はないという人もいらっしゃるでしょう。その通りで、売りたい理由があるならば、税のことなど気にせずに売ればよいのです。ただ、十分に売りたい理由があるのかどうかは、考えてみたほうが良いと思います。よく「利益確定」などと言いますが、持っていれば利益はもっと増えるかもしれないところを、税金を支払ってまで確定するわけです。確定しているのは利益というより税の支払いかもしれません。

いつかは必ず支払う税だとは言うものの、将来のことは分かりません。例えば、何かバカな投資をしてしまって大きな損を出すことがあるかもしれません。そうなったら利益と相殺して税金を節約することもできます。税金のルールはよく変わるので、何らかの措置で得することだってあるかもしれません。資産運用は不確実な将来を相手にしているのですから、確定するものとしないもののバランスというものも、気にしてみてください。

投資や運用を、何らかの教科書・手引書で学んでいる人も多いと思います。でも個人の資産運用は、上で見たような税金のこと以外にも、色々な個人の事情を考慮して行わなければなりません。機関投資家よりよほど大変ですね。だから教科書通りに出来なくても、全然気にする必要はないのです。運用上の細かいことを気にするより、健康に気を使うことのほうが、長い目で見ると資産形成にも、案外大きな影響があると思いますよ。

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