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キリンホールディングス・・・CSV経営? [株主総会]

30日の集中日はキリンホールディングスの総会をオンライン視聴。これも初めての総会です。

実は私本人ではなく、家族の名義の持ち株です。オンライン視聴は正式な「出席」ではありませんし、議決権行使も動議も発言も出来ませんが、これからオンライン「出席型」が増えてきて、代理出席が問題になることはないんでしょうか。

リアル総会でも、実際入り口できちんと本人確認しているのを見たことはありませんが、法的には勝手に代理出席してはいけないんじゃないでしょうか。リアルの場なら、必要であれば本人確認できますが、自宅からIDとパスワードのみで出席する「株主」が本来の株主であることは、確認のしようがないと思うのです。IDとパスワードを持っていれば株主と見做す、ということでいいのでしょうか。だとしたら、もっと色々な株主総会に出席できて、私はうれしいですけれどね。

このキリンホールディングスの総会は「事前登録制」でした。出席希望を郵送して、抽選で当たると出席できるのです。総会の最後に、抽選の倍率を質問した株主がいらっしゃいました。200席に対して1400通あまりの応募があったそうです。コロナ禍でやむを得ず、ということでしょうけれど、株主が出席したいと思っても叶わない状況というのは、やはり早く解消してほしいものです。

株主総会ではとり立ててご紹介したいような内容はありませんでしたが、ミャンマーの事業について質問が出たので、触れておきましょう。ミャンマーでは2015年から、国軍の支配下にあるミャンマー・エコノミック・ホールディング社と合弁で、ビールの製造を行っています。2月5日に合弁解消の方針を公表し、その後交渉を試みているけれども、状況が混沌としていて進展がない、ということです。

クーデターの勃発が2月1日ですから、5日に公表というのは、十分迅速と言っていいでしょうね。提携解消の道筋が見えないというのも致し方ないでしょう。基本方針は、ビール事業からの撤退ではなく、今後もミャンマーの社会に貢献し続けたいが、レピュテーション・リスクは何としても避けたい、と。

キリンの対処の仕方はどう見えているのか、「海外の眼」代表として、社外取締役のオルコット氏にも回答を促す質問がありました。「日本は確かに人権に対しての関心のレベルが欧米とは少し異なると思うが…」なんてまどろっこしい、オブラートに包んだような表現をなさるのですから、この方がいかに日本語がお上手かが分かるでしょう。情勢の複雑さを考慮すれば、キリンは迅速で適切な判断をしていると思う、との回答でした。

ミャンマーの件以外にも質問はあったのですが、回答した担当役員のプレゼンテーションが、まとまりがなかったり中身が薄かったりという印象。自分の担当事業について、出るであろう質問を想定して準備しておくことは、それほど難しくないと思いますが。

キリンは優等生ですし、投資先として良い企業だと思いますが、プレゼンテーション全体を通して、何となく焦点がはっきりしないというか、説得力に欠けるというか。最近もしかするとよくあることなのかもしれませんが、ESGを気にするあまり、何を目指している会社なのか、報告書やプレゼンを見てもよく分からなくなってしまうパターン。キリンの資料にも、「CSV」という言葉が頻繁に登場しますが、このキーワードがそういう効果を持っているような気がします。

“Creating Shared Value” でCSVだそうです。「社会課題への取り組みによる”社会的価値の創造”と”経済的価値の創造”の両立により、企業価値の向上を実現する」と脚注にあります。確かに企業活動の目指すべきことが漏れなく包括されているような表現ですが、ESGの世界ではもしかして一般用語なのですか?少なくとも一般人の感覚ですと「なに、それ?」という感じだと思います。

普通だったら、例えば「美味しい飲み物を提供し、コミュニケーションの促進と同時に健康の増進を図ることを目的とする、その過程において、ESGに取り組む」というイメージじゃないでしょうか。キリンの事業報告を読んでいると、「ガバナンスに優れた会社と評価される」ことが会社の目的なのかと思ってしまいます。違いますよね?

視聴後のアンケートに、事前質問を受け付けるようにしたらどうか、と提案しておきました。花王の総会案内は、確かそうなっていたと思います。来たいと思っても来られない抽選制ならば、必要なのではないでしょうか。ネットだと、会社側が質問を取捨選択できるという点は要注意ですが。

最後にどうでもいいことをひとつ。キリングループと書くときは、キリン・グループとしてはどうでしょうか。「グ」と「ル」の間に濁点の分隙間があるので、「キリング ループ」と一旦目に焼き付いてしまった後は、何度見ても「キリング ループ」と見えてしまうのです。あまりよろしくないと思います、その響き。

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バリュー銘柄ブリヂストン、株主総会オンライン視聴 [株主総会]

今月は、12月決算の企業の株主総会が行われていて、26日(金)と30日(火)がその集中日となっています。今シーズンはもう最初からリアル総会に出かける気はさらさら無くて、自宅でお茶飲みながらの視聴です。

たくさんある中から選んだのはブリヂストン。昨年ポートフォリオに新たに加えた銘柄です。バリュー銘柄としてのチョイスです。配当はその後減額されましたが、想定内だったと思います。特にこれといった話題はありませんが、出来れば長く持っているつもりなので、視聴することにしました。

始まる前にちらっと会場の様子が映り、その後画面はずっとスピーカーとプレゼン用の資料のみですが、Q&Aでは活発に発言がされていましたから、リアルの出席者もそれなりに集まっていたようです。

事業報告の後、中期経営計画・長期ビジョンについてのプレゼンテーション。「サステイナビリティ」にフォーカスしているあたりは世の潮流どおり、今や当たり前のことなんでしょうが、これからは説得力が問われていくことになるんでしょう。ブリヂストンのケースを超簡単にまとめると:

「創って売る」、要は従来の製造業っていうことですが、資源効率を高めてきた実績がある、といくつかの指標を使って数字で示されています。使用する水や資源や排出するCO2を生産量あたり2005年と比べて30~40%くらい減らしている、ということです。
「使う」事業= ソリューションビジネス、これが新しいコア事業。タイヤを扱うことで得られるデータを活かして収益化する、というイメージ。具体的に何をやっているかよく分かりませんが、長期ビジョンの道程中「今ココ」ということですね。モビリティ産業全体がデータ化されるんでしょうから、タイヤメーカーもついて行かなくては。
「戻す」事業、つまりリサイクル。ここが出来てやっとサステイナブルな企業として完成する、というわけですが、まだ「探索」段階だそうです。今はソリューション事業に集中、でもこの分野も手をつけておかないとね、というニュアンスでした。

ソリューション事業はある程度結果を出してほしいとは思いますが、リサイクルまではまだ期待するのはよしておきましょうバリュー投資というのはそこまで必要としませんから。

私が投資した時点では、従来のタイヤ製造部分しか株価に織り込まれていなかったと思います。自動車産業が大きく構造変化して動力が何になろうとも、タイヤを使わなくなるということはないんじゃないかと思って、とりあえずその部分だけでも収益を上げ続けてくれればいい、という発想で投資しているわけです。ソリューションやリサイクルが収益化すれば、それはもちろんありがたいですけれどね。

Q&Aでは足元の業績についての質問がいくつか。2020年度の「その他費用」が1480億円と巨額ですが、これは何の費用か、と。これはきわめてまともな基本的な質問ですね。2020年度は最終的に200億円近い赤字を計上しているわけです。決算発表時には多分散々説明したのでしょうが、やはり株主総会でも説明することは必須だと思います。

これに対しては、Covid19の影響も含めて業績が悪化したため900億弱の減損損失を計上、さらに構造改革に428億の費用、というさらりとしたお答えでした。もう少し詳細を説明してくれてもいいんじゃないでしょうか。キャッシュの出て行かない費用だとしても、額が額ですから。

最後に発言した株主も業績についての基本的な質問。2021年度は利益が急回復する予想だけれどその根拠は何か、と。これに対してもあっさりとした回答で、各事業部からのボトムアップ、+アメリカの屋根材事業の売却だそうです。

余談ですがこの質問者、多分先の質問者と同じ方だったようで、議長が指名してしまってから「あ~しまった」という表情をして何かつぶやいていました。一人一問、っていうルールだったのに。(笑)

収益性の向上についての戦略を問う質問に対しては、ソリューション事業のウェイトを上げていきたいという回答。ソリューション事業の営業利益率は25%だそうで、全体に占める比率で現在15%のところを2030年には30%にしたいのだそうです。リーマンショック後のブリヂストンの営業利益率はだいたい5~13%ですから、3割が25%となると、これが11~16%ぐらいになる計算ですね。

今回の総会で全く話題になりませんでしたが、人事戦略やガバナンスについても話をしていただきたかったですね。総会の議案に上がっている定款変更の項目の一つが、執行役員制度の廃止のなので、何か説明があって然るべきではないでしょうか。

執行役員制度というのはそれほど古いものではなく、新設する話はあっても、廃止するというケースは聞いた覚えがありません。今では多くの企業が当たり前のように採用していて、その存在意義について疑問を持たなくなっていました。ここらで再検討するのもいいのかもしれません。

ブリヂストンの取締役会は、社外取締役が12人中8人。その一方で経営の執行に携わる取締役は社内の2名のみで、権限がある意味集中しているようにも見えます。昨今の新しい取締役会のスタイルは、私の眼には何かと謎だらけに映るのですが、ブリヂストンが何を考えてどのように役員の仕事を分担しているのか、色々と関心があります。

聞いてみたいことはあれこれとありますが、そうなるとやはり質問できるところに座っていないとだめですね。

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「配当を重視せよ」の意味するところ [投資スタイル]

私が常々「配当重視」と言っているので、「配当を出さない株は買わないほうがいいのか?」という疑問が当然湧きますね? この関連では一度書いたことがありますが、もっと整理して「配当を重視しよう」ということについてお伝えしようと思います。

① まず株式投資に対して、配当をもらうのは当たり前だということ。
「投資」はそもそも、何らかの収益を生む事業に財を投じて、その収益を得ることが目的です。「金融商品」という形になっていると、間接的で分かりにくいかもしれませんが、企業の株式や債券に投資する場合は、その企業の上げる収益の分け前を手にすることが本来の目的です。特に株式について言えば、利息や税などすべての費用を払った後に残る利益が、株主のものになるのです。配当もそこから株主の手元に支払われます。

ですから、株式に投資して配当をもらう、というのは投資の在り方の基本なのです。株式という形で事業に投資し、その分け前をもらう、という当たり前のことなのです。ところが株式は、上手く行けば容易に値上がり益を得ることができるため、当たり前のことが忘れられがちなのです。

特に日本では高度成長期に、株価が上昇する一方で配当利回りが非常に低くなり、配当に期待して株式投資するよりも、値上がり益を得るために投資することが主流になってしまいました。それは仕方のないことですが、事情の変わった現在でも、株式は値上がり益を得るものだと思っている人が多いのではないでしょうか。「配当を重視しよう」というのは、基本を思い出してほしい、ということなのです。

配当は多ければ多いほどいいとは限らないし、出さない会社が悪いとも限りません
どのくらい配当すべきかは、会社によって異なります。その前にまず、利益と配当の関係から順を追って説明しましょう。

会社の事業から「純利益」が上がると、それは株主に支払われる配当」と、会社の資産として残る内部留保」に分かれます。「内部留保」は会社の「純資産」(=資本)に加わります。「純資産」は株主の財産を意味しますから、「配当」として現金で受け取っても、「内部留保」として会社にとどまっても、どっちみち株主に帰属するのです。

「内部留保」は会社にとどまると言っても、現金のまま保管されるという意味ではありません。事業は継続しているわけですから、そのための資金となるのが普通です。「内部留保」として事業への投資に充てるべきか、それとも「配当」として株主に還元すべきか。ここで「ROE」が鍵を握ることになります。

ROE」は、資本が何%の利益を生むかを表したものです。「内部留保」は純資産(=資本)に加わりますから、同じペースで事業が継続されるならば、新たに資本に加わる「内部留保」もROEと同じ収益性があるはずです。ですからROEの高い企業であれば、配当として社外に流出させてしまうより、事業により多く投資して、どんどん売り上げを成長させるべきだ、ということになるでしょう。特に、需要が十分にあって市場が急速に拡大している場合は、まさに「配当なんか払ってる場合じゃない!」という感じでしょうか。

もちろん、他に考慮すべき条件は色々とあるでしょう。資本構成によっても、金利水準によっても、景気判断によっても下される判断は違ってくるとは思いますが、配当を出せばよいというものでもない、ということはお分かりいただけたでしょうか。

お金の使い道がないのなら、利益は出来るだけ配当に回していただきたいものです。
必要以上に「内部留保」を増やせば、資本効率はどんどん下がっていきます。ROEの分子である「利益」の増え方以上に、分母である「資本」の額が増えて行けば、ROEは下がっていく、ということです。

配当性向は、財務の安定性資本効率事業の見通しなど、バランスを取って決定するべきです。日本の上場企業の配当性向は、3割と4割の間にずいぶんと集中しているように見えますが、あるべき配当性向は、もう少し幅があるのではないでしょうか。過去の習慣と周りの動向を見ながら、何となく決めている会社が未だに多いのかもしれません。

割安株を探す時には、やはり配当重視がお勧め。
個別株を選ぶスタンスは、大きく分ければ「成長株」と「割安株」の2つです。
成長株」には今しがた説明したように、配当を出さないことが正しいケースも多いでしょう。配当利回りが高いうえに高成長が期待されるという銘柄が、もちろん絶対ないとは言いませんが、多くの成長株は、配当利回りも含め割高感があったとしても投資する、というのが普通です。ただ、それでも配当を全く出さない銘柄よりは出している銘柄のほうが、リスクは低い傾向にある、とは言えるでしょう。

割安株」を選ぶ方法も、利益を重視すれば低PER、純資産を重視すれば低PBR、そして配当重視の高配当利回り等々、色々あるでしょう。利益は変動が激しいという問題がありますし、純資産を基準にすると、右肩下がり・じり貧状態の銘柄が多く挙がってきてしまいます。

その点配当を重視すると、その事業は少なくとも配当を払えるだけの利益を上げているということになりますので、比較的良い企業を選ぶことができます。また、なかなか市場で注目されず、割安状態が長く続いても、配当という収入があれば、投資家にとって持ち続けるインセンティブになります。「保有する楽しみ」は無視できませんからね。

→ 配当と成長 (2019年7月31日)

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