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ESG投資を実践するには [投資スタイル]

このテーマでもっと早く書こうと思ったのですが、投資のテーマとして色々と動きのある分野でもあり、私自身まだ不勉強な部分もあり、文章にまとめるのに想定外の時間がかかってしまいました。

ESG投資が盛んになって来た背景について、一度今年の5月に書きました。その時も触れましたが、ESGという用語は新しいものの、社会課題に向き合う投資活動というものは、以前から存在します。SRIだとかCSRだとかいう呼称で株式の運用も行われてきました。株式投資の具体的なやり方として古くからあるのは、環境や社会にとって良くないことをしている企業を除外する、または逆に良いことをしている企業をピックアップする、といった「スクリーニング」の手法です。

スクリーニングによる投資は、限られた投資対象にフォーカスするということになりますが、ESG投資が当たり前になってくると、一部の銘柄だけを扱っているわけにも行かず、通常の運用にESGに関わる情報の分析を取り込んでいく、ということにもなります。機関投資家など規模の大きな投資家であれば、ESGを意識して事業を行うよう、株主としての影響力を行使しよう、ということも起こってきます。議決権行使によって、その意思を表明するということも可能です。特にインデックス運用の場合は、ESGの評価で銘柄を選ぶということは出来ませんから、そうした方法で、ESGを意識した投資の実現を図るしかありません。

個人投資家として、株式市場でESG投資を実践しようとすると、どういう選択肢があるでしょうか。既に巷には多くのESGを標榜した投資信託があるので、そうした投資信託を買えばよい、というのが一番簡単な回答でしょう。ESG指数なるものも複数あって、インデックス投資もできます。このような投資信託や指数の組成に当たっては、ESG専門の評価機関が企業の分析・評価に関わっているわけで、我々はその評価を信頼して投資するということになります。

個別銘柄に投資する場合には自分で情報収集することになりますが、企業の「統合報告書」が、ESGに対する取り組みに多くのページを割いています。かつては「CSRレポート」といった名称がよく見られましたが、5~6年前からでしょうか、アニュアルレポートと一体化した「統合報告書」を作成する企業が増えています。事業活動とESGは別個の物ではなく、価値創造の基盤に社会的責任を重視する姿勢が無ければならない、という考え方が主流となり、企業の情報開示もその流れの中にあるのです。

統合報告書は多くの場合、とても美しく整っていて、企業がESGにどのように取り組んでいるのか分かるようになっています。それは大変良いことなのですが、それでスッキリ納得できるかというと、そう簡単なものでもないというのが正直なところです。どういうことかというと、そこで分かるのは、「企業がESGに熱心に取り組んでいる」というところまでです。もう少し意地悪く言えば、「企業がESGへの取り組みの情報開示に熱心である」ことが分かる、という言い方もできます。

たとえば環境を守る活動に熱心だと言っても、本当に環境保全につながっているかどうかまでは分からないということです。ただそれは誰が悪いわけでもなく、ESGについての評価は誰がやっても難しい、というのが実態ではないでしょうか。世界にいくつかある専門の評価機関の評価のクオリティーまで批評する能力は私にもありませんが、各企業の「実際の社会的貢献の度合い」より以上に、「ESGの情報開示の質」を評価することになっているのでは?などと思わないでもありません。

ただ機関投資家にとっては、情報開示がきちんとされているということは、決定的に重要です。なぜならば、情報開示が悪い=リスクが高い、ということですから。もちろんそれは個人投資家にとっても同じですが、そのリスクを自分でとるつもりならば構わないわけです。機関投資家の場合は、その背後にいる最終投資家に報告する義務がありますから、勝手に高いリスクをとるわけにはいかないのです。それを考えると、ESGの評価と言ったときに、実際に環境や社会に与えるインパクトと、ESGに取り組む姿勢、そしてその開示の良し悪しの評価が、混然一体となっている状況は容易に想像されます。

先日は、非常によく使われているあるESG指数の評価基準が、実は環境や社会への貢献を評価しているわけではないという、一種の暴露記事を目にしました。それぞれの企業がESG絡みのリスクをどの程度負っているか、ESG要因から企業収益がどのくらい影響を受けるのか、といったことを評価しているのだというのです。真偽のほどは分かりませんが、ESGの評価も指数の作成も、運用のニーズに応えるビジネスです。投資家のほうが試されているのかもしれません。

専門家が評価するのも難しいESGですから、むしろ個人は個人らしく評価するのも良いと私は思っています。プラスチック容器を減らす努力とか、燃料を節約する努力とか、気になったことがあればそれが銘柄選択のきっかけになる、というのはおおいに有りです。たとえば私は、いつも洗濯機を使う時に、使う水や洗剤の量が、ちょっと昔に比べてものすごく減っていることに思いを致します。そのことがどれだけ環境保全に貢献するのか分かりません。洗剤や洗濯機メーカーのESGスコアに効くのかどうかも知りません。でも、確かに信じられる事実がそこにはあるように感じられます。専門家が見るのとは違う視点を持てるのが、個人投資家の良さでもあると思うのです。

さて、今年はこれが最後の投稿になりそうです。
2022年もまたよろしくお願いします。
良いお年を!

タグ:ESG投資
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