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ようこそ、インフレ経済 [市場と経済]

日本株の上昇が巷の話題になるというのも久々です。流石に足元は熱くなりすぎているように見えますが、徒花という感じでもありません。「外国人が買っているから上がっている」などと解説されますが、外国人が買うのは別に自然現象ではなく、彼らも理由があって買っているわけです。

日本の株式市場がインフレ経済の到来を感じているのだと、私は思っています。相場っぽい表現なら「好感する」と言いますね。燃料や小麦粉や卵だけが上がっているわけではなく、最終製品の小売価格が上がり、働く人の賃金に波及する、という好循環の始まりを予想して、市場が反応しているのでしょう。

インフレは株式市場に有利だと、ここで当たり前のように述べていますが、そこがイマイチ腹落ちしていない、という人のために、復習です。インフレだからと言って株価が上がるとは限らない、という説も聞くでしょうから、それぞれ何を言っているのか整理しましょう。

株価は企業の収益を反映します。企業が利益を上げれば、株式の価値が増します。企業への出資者は、利益の分け前をもらう権利を持っているので、その権利を形にした株式の価値が増すわけです。そしてその企業収益というのは、「名目値」です。

「名目」というのは、「物価の上昇分(または下落分)を含む」という意味です。売っている商品やサービスの価格が上昇すれば、売っている数量が同じでも、売り上げが伸びます。この時仮に、すべての物の価格が同じペースで上がるならば、売り上げの成長率とコストの増加率は同じになります。するとその差である利益も、同じペースで伸びることになります。つまりインフレ経済の下では、たとえ実質的に成長しなくても、売上や利益が伸びるわけです。

現実には、全ての物の価格が同じペースで上昇することはありません。よくあるのは、燃料や原材料の価格だけが上がって、商品の価格全般に波及しないというパターン。すると売り上げが伸びないのにコストだけ増えるという企業が多く出てきます。インフレと聞いて、景気にネガティブなイメージを持つ人は、多分この状況を思い浮かべているのでしょう。また物価全般が上昇しても、変化が急激に起きることで経済が混乱する、というパターンも考えられます。

インフレだからって株価が上がるとは限らないという説は、こうした解説を伴うことになるでしょう。ただ、原燃料だけしか上がらないのであれば、「インフレ経済」とまでは言えません。原燃料の上昇に見合って商品の売値を上げることができ、従業員の賃金を引き上げることもできて、インフレの好循環が実現する。それで初めて「インフレ経済」です。

私が社会に出たころは、経済環境はまだインフレ的でした。企業の業績予想はとりあえずプラス5%から始まる、というイメージでした。日本は決して成長経済ではありませんから、昔のように簡単に成長できるとは言いませんが、過去30年のデフレ期に比べれば、楽になるはずです。

ついでに申し添えますと、インフレは企業の毎年の決算に有利なだけではなく、企業の保有する資産にもプラスに働きます。こうした好環境の到来を株式市場が歓迎しているように、私には感じられるのです。


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