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戦争と株価 [市場と経済]

ウクライナへの侵攻が始まってから、世の中に流れるのは暗いニュースばかりで、マーケットも元気が出ません。こういう時は売るもんだ、という考え方もあるでしょう。ただ、少し長い目で見ると、戦争や争乱は、イコール売り、ということにはなりません。そんな時に株を買うのも不謹慎なようではありますが、とりたてて売る理由にはならない、とだけ言っておきましょう。

戦争によって経済活動はあれこれとマイナスの影響を受けます。当事国は人的にも物理的にも被害を受けますし、貿易や金融がストップすることもあるわけです。昨今はサプライチェーンがグローバル化していますから、意外なところに被害が及ぶこともあるでしょう。しかし世界はそんな時でも経済活動を続けています。私たちは毎日ものを食べたり動き回ったりして生きています。経済は止まることはありませんし、受けたダメージを修復しようと動きます。物事の良し悪しはともかく、失った以上に回復し、成長することもあります。

そして、好むと好まざるとにかかわらず、軍事費はGDPにプラスで計上されます。もちろん支出する国家財政は苦しくなりますが、国家の赤字は、橋や道路を造っても戦闘機を作っても、同じようにGDPを増やします。残念なことにというべきか、色分けは無いのです。

今あるようなGDPが広く使われるようになったのはせいぜい20世紀半ばで、それほど古くはないようですが、そもそも国の経済力を知るというニーズは、歴史的に見れば、戦争遂行能力を知る必要があったというわけです。発達の途中で、軍事費のようなコストは差し引くべきではないか、という議論は無かったわけではないようですが、元々のニーズを考えるとそうなるはずもなく、そのまま今日に至っているのです。株価は長期的には、そんなGDPに沿って動きます。戦争のようなショックを機に、活躍する企業が変わることはあるでしょうけれど。

でも株価は実際下がってますよね、というのも事実。とりあえず売り、という判断も、それはそれで正しいと思います。戦争状態で何が起こるか分かりませんし、どこにどんなダメージがあって修復されるのにどのくらい時間がかかるのか、といったことは予想が困難です。それは平常に比べて明らかにリスクの高い状態です。特に短期的な資金にとっては避けるべきリスクということになるでしょう。

ごくごくざっくりと株価というものをモデル化すれば、何らかの価額で表される価値が分子に、「割引率」が分母に来る分数の形になります。リスクは金利などと共に、その「割引率」を構成します。GDPという価値がプラスになるとしても、リスクを含む「割引率」が急速に膨らめば、株価はやはり下がります。株価が戻って来るには、急速に膨らんだリスクが再び縮むのを待つことになりますね。

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