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物価は上がっているんだから… [市場と経済]

日本の株式市場は何となく強いようです。日本の経済指標がそんなに強いわけでもないし、世界景気の先行きも、必ずしも明るいわけではないのでしょうが、それでも株価がそれほど下がる気がしないというのが正直な感触です。その根底にあるのは、物価上昇。インフレ経済の到来です。

消費者物価指数を見ると、2021年の秋ごろから前月比プラスが定着、前年同月比で見ると、2022年の8月以降は3%を1度も下回っていません。安定的な上昇率がどこに収まるのか分かりませんが、物価の上昇基調は続くと思っています。一般的な報道を見ていると、原燃料の物価が上昇しているのに賃金が上がらない、というトーンばかり感じられますが、最近は人件費と思われる物価上昇も目に付くようになってはいませんか?

いわゆる正規労働の賃金は上がっていないのかもしれませんが、パート・アルバイトの時給はここ10年ぐらい、なんだかんだ言って上がり続けています。事務系の職種などはむしろ下がり気味ですが、元来水準の低かった外食や販売員、物流や清掃といったところが強いようです。正規労働の賃金は、雇用のシステムや年齢構成など、経済以外の要因も色々とありそうですが、たとえば初任給の統計を見ると、上昇傾向は続いています。今国を挙げて熱心に取り組んでいる働き方改革は、人手不足を深刻化させる要因ですから、今後も簡単に労働の需給が緩むことはないように思います。

為替レートも物価に効いて来ます。為替の予想をするつもりはありませんが、居心地のいい水準が、110円を中心とした辺りから、140円なのか150円なのか、明らかに居場所を変えた感があります。

私は購買力平価の図を時々眺めるんですが、2022年は超長期的にフェーズが一変した記念すべき年のように見えます。1985年に円レートは、購買力平価を大きく円高方向に離れ、日本経済に大きなインパクトを与えました。そしてそのまま日本は35年あまり、円は高い高いと言いながら、経済を運営してきました。円は高い水準を保ち、日本の物価に下落圧力を与え続けたのだと思います。

私のように株式の価値を拠り所に投資をするという発想ですと、円レートだって高すぎるならば、それを是正する方向に動いても良さそうなものですが、為替市場というのはそういうものでもないんでしょうね。物価のほうが35年かけて為替レートの指し示す水準に近付いてきた、というふうに見えます。そしてこれからは、円安が物価を引き上げる方向に導いて行くよ、とでも言いたげです。

デフレ時代の30年は、経済活動について言えば、改めて大変だったな、と思います。単純化した議論ですが、普通にビジネスしていると、売上は減るわけです。売っているものの価格が下がるのがデフレですから、同じ売り上げを得るのにより多く売らなくてはならないことになります。何とか打開しようと海外へ出れば出たで、円高ですから、投資した資産価値は減り、売上には下落プレッシャーがかかります。その一方、何もしないで円の現金を抱えていれば、財産は減らないわけです。

よく「企業は現金を抱えこんでけしからん」という政治家が居たり、「日本の個人は現預金ばかりで金融リテラシーが低い」などという金融教育家が居たりしますが、どちらも全く合理的な金融行動なのです。投資して頑張ってもデフレ下では報われない、というのが合理的な答えなのです。

物価が上がるということは、金額が増えるということです。「実質」も大事でしょうが、私たちは多くのことを、お金の額で測っています。そしてそれは「名目値」なのです。実際の経済は多くの場合、名目値で認識されているのです。企業の売上や利益も、名目値です。売上が5%伸びている時に、「インフレ率が3%だから実質売上は+2%だね。」なんて言う人はいないのです。もちろん株価も名目値です。だから株式市場も大丈夫。なんたって物価は上がっているんだから。

インフレ経済の到来は、歓迎すべきことです。経済経済というならば、物価高を悪く言うような言動は避けるべきです。物価高で苦しむ個人を援けることは、福祉政策ではあっても、経済政策などと呼ばないでほしいものです。正規雇用の賃金が上がっていないとすれば、それはまだ物価上昇が足りないということに過ぎません。常用労働の指標は、景気動向指数でも「遅行系列」に含まれます。経済に遅れて動く、という意味です。

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