SSブログ

REITの銘柄選び [投資スタイル]

REIT続編。

ではREITの銘柄選びに話を進めましょう。選ぶポイントは何でしょうか。答えはシンプル、分配金利回りです。まあ当たり前と言えば当たり前です。次にチェックするのはその分配金が増えているのか減っているのか。減ってさえいなければOKですが、少しずつでも増える傾向にあるならば言うことありません。過去の傾向が今後を保証するわけではありませんが、REITのマネジメントの良し悪しを判断するには、過去の実績を見る以外にはないというのが正直なところ。そこは仕方ありません。

それからどんな分野の物件に投資しているのかも大事です。REITを物件の種類別に分類しますと、オフィス、住居、商業施設、ホテル、物流施設、そして今のところ上場しているのは一本だけのようですが、ヘルスケア施設もあります。単一の種類に投資するのが特化型、幅広く投資する総合型、その中間で2種類に投資するのが複合型のREITです。特定の地域に特化したREITもあります。

総合型は何種類もバランス良く保有するので、言うまでもなく分散が一番効いています。一方特化型は景気やそれぞれの業況を反映します。ここしばらくは、マーケットが成長している物流施設に人気があり、逆に商業施設は、オンライン・ショッピングの影響で将来が不安だということで嫌われ気味です。コロナで世の中の動きが止まった時などはホテル業界が大きなダメージを被り、ホテル特化型のREITも同様に、大きな影響を受けました。住居はその点景気の影響を受けにくくて安定しています。

何を選ぶかは投資家の判断、そこは株式の銘柄選択と同じです。物流REITは成長期待を織り込んで分配金利回りは低い傾向にありますが、これは成長株の株価が高めになるのと似ています。一方人気のないREITの分配金利回りが高めなのは、割安なバリュー株に似ています。住居型REITに利回りの低いものが多いのは、その安定性が評価されているからでしょう。安定志向の強い日本で、ディフェンシブな銘柄の評価が高いのと、これも似ています。

財務の安定性についてはどうでしょうか。有利子負債比率などの指標は重要ではありますが、現在の上場ファンドを見る限り、特に心配な水準のREITはないようです。そのほか私は「資産運用会社」がどこかチェックします。信用ある不動産グループや金融グループに属していれば、やはり安心です。どのREITも資金調達の一部を負債で行っていますから、何か大きな変動があった場合に支えてくれる金融機関があるかどうかは気になります。

利回りはその辺りの信用度を概ね反映しているように見えます。知名度の低い資産運用会社が運用するファンドの利回りが高い(つまり割安)ということはよくあります。それをどこまで気にするべきか、答えはありませんが、少し利回りが低くても安心感を優先するか、有事の心配よりも利回りを取るか、それも投資判断ということになります。

信用度というのは様々な要素でできているわけですが、それが分配金の利回りに現れるのです。利回りは高いほどいいとは言いましたが、その高さがどこから来るのか考えてみる必要はあるでしょう。いつも利回りが高いもの、つまりREITの価格が安いということですから、そこには投資家に嫌われる何らかの理由があると考えるべきです。知名度かもしれないし、それが属する企業グループの評判かもしれません。特化型の例で述べたように、業種のせいかもしれません。ファンドのサイズが小さすぎて嫌われるということもあり得ます。そうした市場の評価と自分の評価の間に差があれば、とても魅力的な投資対象ということです。

REITの情報を得るのに、私は  https://www.japan-reit.com/ というサイトをよく参照しています。サイトを運営しているアイビー総研という会社についてはよく知りませんが、サイトを見る限り偏りのない内容で、問題ないと思います。利回り一覧表、便利です。会員登録もせずに利用していますが、銘柄選びにはほぼ十分な情報が得られます。とことん調べて投資したいということであれば、個別のREITのウェブサイトで資産運用報告書を見ることもできます。保有している物件や借りている負債の詳細など、細かく載っています。

最後にREITと金利について触れておきましょう。金利が上昇する環境はREITにとって厳しいのではないか、という点です。一つには、金利水準が上がれば、分配金利回りを基準に買われるREITは価額が下がるであろうということ。それはそうでしょう。分配金利回りは周りの金利水準に合わせるように動きますから、分配金の額が変わらなければ証券価格は下がります。しかしより重要なのは、分配金の金額です。分配金をもらうことが目的の投資ですから、証券価格の変動はあまり気にし過ぎないことです。

もう一点は、金利が上がると利払いが増えてREITの利益も減るのではないかということです。REITは銀行から資金を借りていますからね。これは分配金の額に影響するので深刻です。この時REITの収入である賃貸料が全然上がらなければ、分配金が減ることもあり得ます。ただ、金利の上がる経済環境は、物価上昇を伴うことが多いので、賃貸料の上昇が期待できます。金利の上昇は望ましくはありませんが、物価上昇時には賃貸料収入や不動産価格の上昇がプラスに働く、つまりインフレヘッジ機能がある、というのがREITという商品なのです。

REITのお話は以上。参考になりましたか?


タグ:REIT
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

REITは個人の資産運用に向いている [投資スタイル]

前回のブログで、両親の口座でREITをたくさん買ったと書きました。不動産投資信託です。私はこれは、老後の資産運用に向いた投資対象だと考えています。

事情は人それぞれでしょうけれど、引退後の生活においては、やはり日々の収入の足しになるものが欲しいというのが普通です。ですから株式投資する時も、とにかく配当がきちんともらえることが大事、と前回も申し上げました。その点REITは、投資家に「分配金」を払うことを目的とした金融商品ですから、老後の資産運用の目的と一致します。老後に限らず、個人の資産運用一般に向いた、便利な金融商品だと思います。

株式であれば、会社が上げた利益をどう使うかは経営判断です。配当を出して投資家に報いるもよし、更なる事業の成長を目指して投資するもよしです。ところがREITは、賃貸収入など事業から上がった利益、ほぼすべてを分配金として投資家に還元します。利益の90%超を分配すれば法人税が免除されるというルールがあるので、そうしないはずがありません。上がった利益が再投資には使われないので、資本の成長には不利ということになりますが、その代わり投資家は、毎期しっかりと収入を得ることができます。

REITの分配金は、株式の配当と比べても概ね安定しています。もちろん株式も業種によって千差万別ですが、賃貸料というものはそもそも激しく上がったり下がったりはしない、ということに加えて、一つのREITは多数の建物を保有していて、分散が効いているからです。もちろん景気や金利による収益の変動はありますが、建物個別のリスクは分散によって十分低減されています。

収入を得るために不動産を保有するのはどうだろうか、と考える人も多いと思います。REITも中身は不動産ですが、不動産そのものを保有する場合と何が違うのか、整理しておきましょう。

メリットはまず簡単であること。上場しているREITの場合、証券口座さえあれば、売買に何の手続きも要りません。マーケットが開いている限り、いつでも売り買いができます。これが不動産であれば、物件と取引相手を見つけて契約して取引税を払って登記をして毎年税務申告をする、ということになります。保有していれば当然物件を管理する必要もあります。

少額で投資できることも、一般の個人の資産運用に向いています。自分の資産の規模に合わせて、好きなだけを不動産に配分できるわけです。そして既述のように分散も効いていて、リスクが抑えられています。一軒しかない保有不動産であれば、テナントが出ていった瞬間に収入はゼロになってしまいますが、多数の物件を保有しているREITには、そういう事態はまず生じません。

REITは証券である分、確固とした不動産よりも値動きが不安定なのではないかと心配する向きもあるかもしれません。確かにREITは毎日市場で値段が動いていますから、その気持ちは分かります。ただそれは別の言い方をすれば、「流動性がある」ということにすぎません。もし毎日不動産の時価が分かるものならば、きっと証券と同じように変動しているのではないでしょうか。流動性が低くて取引がないから分からないだけのことなのです。

それでもREITより不動産投資を選ぶ理由があるとすれば、それは不動産を担保に借金ができることです。少ない元手で大きな投資をすることが可能になります。ただ、これもリスクを抑えて運用したいのであれば、むしろ借りたくもないのに借りる羽目になってしまう、とも言えます。

あとは、不動産が好きだから不動産を買う、ということでしょうか。物件や街を見て歩いたり、今後どの町が発展するのか予想したり、それ自体は実際楽しいですからね。

長くなりましたので、REITの銘柄選びについては、回を改めるとしましょう。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

親の資産を運用する話 [投資スタイル]

今日は少々私事を書きます。

11月にもう今年の総括みたいなことを書くのもなんですが、今年は色々なことがありました。両親が相次いで亡くなり、今はまだ相続の手続き中です。もう十分に高齢でしたし、母が先に逝きそうになるところを耐えて、父を待っていたらうっかり先を越されてしまったので慌てて追っかけた、というように見えました。最期のときまで仲睦まじく寄り添っていられて、娘の眼から見て、良かった、という思いが残りました。人間必ず最期が来るのですから、良かったと思える終わり方は大切です。

15年ほど前から両親の金融資産の面倒を見ていました。2つの証券会社に口座があり、どちらも「代理人契約」が必要だと言われたので、契約書を交わしました。その後運用に当たり、A社では私の指示で何でもすることができて、たいへん使い勝手の良い口座でした。ところがB社のほうは2年ぐらい経ったところで、契約更新だから本人たちに会わせろと言って来ました。親の居る老人ホームには行ってほしくなかったので、口座の中の売れるものは売ってしばらく放っておいたら代理人契約の期限が切れ、解約したいから口座の中身を知らせてほしいと頼んだら、もう代理人ではないので教えられないと言われました。では相続が発生するまで凍結しておいてくださいということに。高齢者の口座に対するサービスは、今どのあたりが標準なのでしょうね。

それはさておき、実際の運用です。一般に高齢者の資産運用は、リスク資産を少なく保有せよ、という原則があります。80歳なら8割を債券・2割を株式、などと言ったりもします。しかし日本という国には、適当な低リスク資産が無いというのが実情。債券を買おうと思っても、品ぞろえが十分あるとは言い難い状態です。そもそも超低金利ですから、国債などリスクの非常に低いものとなると、銀行預金よりはましという程度の金利になってしまいます。個人向け国債は悪い商品ではもちろんありませんが、余命が何年か分からないときに、ほとんど収益のない資産運用では心もとないでしょう。

急場をしのげる現金さえあれば、高齢者の資産運用であっても、株式等を中心とした運用でよい、というのが私の結論。日本の保険制度は素晴らしく親切で、高額な医療費が発生しても、なんだかんだと補助してくれます。急に多額の現金を用意しろとは言って来ません。(親切すぎて制度の将来が不安ですが。)ですから無理に債券を持つのではなく、株式ポートフォリオの中身を高齢者向けに調整すればよいと思いました。ここで敢えて「リスクを低く」という表現を使っていませんが、それは分散の度合いを落とすからです。

債券でも外債ならよいではないかというご意見もあると思います。しかし為替のリスクを負う以上、円建ての債券と同列に論じることもできません。高齢者の外貨投資については、以前このブログにも書いています。

まず配当重視の方針をさらに一歩進め、配当利回りの低いものは手放していきました。かつてのハイテク株など、成長に期待して買うタイプの銘柄は、たとえ成長性があると思っても、それがいつ実現するのかわからないので、高齢者には向きません。株価は上がればラッキー、というくらいの気持ちで、配当がしっかりもらえる、ということのみを重視した銘柄にそろえていきました。

業種は当然偏ります。通信株と商社株が多くなりました。通信というのは携帯電話。業績の上下はあっても、ほとんどのユーザーが毎月きちんと支払ってくれる、安定したビジネスです。株式市場では成長性がないと思われているようで、あまり人気がありませんでした。商社は総合商社。コングロマリット・ディスカウントとよく言われる現象で、株価が割安でした。(総合商社株についてはこんな記事→「投資の神様」の商社株投資

アメリカ株も買いました。P&GやJ&Jのような生活必需品の銘柄は本来ディフェンシブの王道で、安定志向の運用に適しています。ただその安定志向が日本では強すぎるのか、花王もライオンも配当利回りはあまり魅力的ではありませんでした。またアメリカの高配当業種、石油株も買いました。

GAFAMのような成長株は、一切買っていません。良いか悪いかの議論ではないのです。成長の勢いがある産業は、変化が起きるときは一気に起きます。振り返って買えばよかったのに、というのは簡単ですが、何らかの技術革新や経営判断のミスで、あっという間に消えてしまうこともあるのです。高齢者の生活を支えるための運用を、そんな状況にさらすことはできません。

実は一番増えたのはREIT(不動産投資信託)です。国内のJ-REITです。REITは株式のように内部留保しません。不動産から上がる賃料は原則すべて分配金として払い出します。その分資産価値の上昇は抑えられますが、収入が必要な高齢者には良い投資対象です。REITについては改めて書くことにしましょう。

こうしてふり返ってみると、配当利回りが高い=株価が安いと思って買った銘柄は、その後株価が上がって、今はそれほど高利回りにも見えなくなっていたりします。目的は配当収入を得ることでしたが、資産価格の面でもそれなりの成果が上がったということになります。また、私が長い間高いと思い続けていたアメリカ株の配当利回り、日本との差はかなり縮まっていることが分かります。先ほど見てみたところ、花王とP&Gの配当利回りがほぼ同じでした。他にもJTとフィリップモリスがほとんど同じだったり、キャタピラーよりずっとコマツが高かったり。常識が塗り替わりつつありますね。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。