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長期投資が安定してるって? [投資スタイル]

去年から、「金融教育」というものが猛然と世の中に出回るようになりまして、私としても、関係するサイトを見たり、実際のセミナーを視聴してみたりしました。ファイナンシャル・プラニング中心の内容となっていて、私が細々と実践してきたものとは性格が違いますが、これはこれで必要な内容かと思います。資産形成については、その必要性を力説、そして結論は積み立てNISA、という感じでしょうか。金融教育を担うのが主にFPの皆さんでしょうから、自然な流れといいますか、現実的な教育プランです。

一方このブログで話題にしている、経済、金融市場、投資についてはあまり語られません。経済や投資についてはともかく、金融市場については、もう少し盛り込んでほしいというのが正直なところです。金融教育の目的の一つは、正しい判断力を身に着けることですし、そのためにはまず、金融商品の基礎でもある、金利・債券・株式について理解することが必要です。

それはさておき、とても気になったこと、それは「長期投資」についての説明です。結論は長期投資の推奨、それについてはもちろん異論はありません。ただ、どの説明を見ても、長期で保有するほうが「安定する」という書き方をしているのです。これは正しいのだろうか、という疑問です。

「安定する」という表現は、何を意味するのでしょう。少なくとも字面からは、リスクが低いという印象を受けるんじゃないでしょうか。「安定」かどうかはともかく、「リスクが低い」は間違いです。運用する期間は長いほどリスクは高い。これは常識です。そうでなければ、短期金利が低くて長期金利が高いことの説明が付きません。長期で貸し付ければ、短期の場合に比べ、返してもらうまでの間に「何が起こるか分からない」度合いが大きいので、リスクが高いのです。

個別の株価にしても、1日や2日で半分になるにはよほどの事件が必要ですが、10年で株価が半分になる銘柄はざらにあります。長期のほうがリスクが高いというのはそういうことです。それなのに「長期は安定」と説明されて、なんとなく納得してしまうのはどういうことなんでしょうか?

説明の仕方は一つではありませんが、例えば簡単に間違いだと分かるのは、単年の騰落と複数年の移動平均を比べてしまっているケースです。株価指数は毎年上がったり下がったりしますが、過去10年のパフォーマンスの年平均値を比べれば、去年と今年で大きな違いは出ないはず。移動平均が各年の騰落よりなだらかな曲線を描くのは、当たり前ですね。

長期で持っているほうがパフォーマンスが良かった、と実績が示されているだけの説明もあります。そのような結論に至るのは、結局株価が上がっている、少なくとも右肩下がりになっていないからです。積み立て投資していれば、いわゆるドルコスト平均法の効果で、株価が横ばいでもパフォーマンスはプラスになります。しかし株価がずっと右肩下がりですと、長期であればあるほどパフォーマンスは悪くなるでしょう。

長期投資を奨める理由は、実は「じっと持っていれば上がるものを、途中で売ったり買ったりするのは効率が悪い」ということなのです。この「じっと持っていれば上がる」と明言できないから「安定」という表現で誤魔化している、とも思えます。でも「じっと持っていれば上がる」ということこそが、本当は重要なのです。

本当に伝えなければならないことは、株価が経済成長とともに上がるということ(ただしデフレであってはいけません)、それは運でも偶然でもなく、合理的にそうなるのだということです。それは経済成長の源泉が、企業の利益だからです。経済が成長しているのに、全企業の代表選手団である上場企業全体の利益が上がっていない、などということはあり得ないのです。そして企業が利益を上げれば、株式の価値が増え、株価はそれを反映して上昇するのです。

大事なのは、皆が働いて価値を生み、経済成長を続けること、企業は利益を成長させ、株式市場と経済の成長が好循環を生んでいくことです。そして誰もが手軽に経済成長の恩恵を受けられる、というのがインデックス投信の積み立てという方法であり、それに税制上の特典を付けたものが「積み立てNISA」というわけです。

長期投資が安定しているとすれば、それは投資家の心理状態かもしれませんね。そういう意味なら間違いとは申しません。

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