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運用が安定している、とは? [投資スタイル]

運用が「安定している」という表現はよく使いますし、一般にそれはリスクの低い運用であることを意味すると言ってよいと思います。ただ、「安定」という意味があやふやだと感じる事例が時々あります。確信犯ということもあるかもしれませんが、以下は最近遭遇した2つのケースです。

一つはオンラインでよく目にする資産運用関係の広告です。オルタナティブ投資だと謳っていますが、中身を見ると要は不動産投資のようです。それが悪いという気は毛頭ありませんが、宣伝文句の一つは「安定資産」だというものです。

不動産投資が安定している、というのは、感覚的に納得感があるのでしょう。文字通り、地に足がついていますからね。でも、運用対象として安定しているかどうかは別の話ですし、安定の意味するところが「低リスク」なのかという話になると、ますます疑問です。

株式は確かに毎日価格が上がったり下がったりして、安定感に欠けるように見えます。しかし不動産価格が安定して見えるのは、流動性が低くて毎日値付けが出来ないだけ。もし不動産に毎日値をつけることができるならば、きっと価格は動いていると思います。見えないから動いていないということではありません。だからリスクが低いわけでもありません。売りたいときに売れる(=流動性の高い)株式のほうが、リスクが低いに決まっています。

もう一つの例は、金融教育のカリキュラムの中にありました。資産運用は「長期投資」であるべきだということを説明するくだりです。そこでは長期のほうが「安定したリターンの獲得が期待できる」、「リターンのぶれの抑制が期待できる」となっています。そこで実証として、内外の債券株式、つまり4資産に分散して投資した場合のシミュレーションが載っています。1年ごとのリターン、5年ごとのリターン、10年ごとのリターンと比べているのです。すると確かに、期間の長い方が、ぶれが小さくなっているわけです。

ただ、「長期=安定・低リスク」は正しくありません。結果がそうなっているのは分散投資の効果でしょう。短期で見ると、分散したはずの資産が同じ方向に動くこともあるでしょうから、分散投資は、短期より長期のほうが安定した効果が得られるのだと考えられます。

しかしそれぞれの資産は、長期的に保有していれば、それだけ結果の振れ幅が大きくなります。株式の1銘柄は、1日で半分や倍になることはありませんが、5年保有していれば、全く珍しい事ではありません。これは1日と5年を比べれば、5年保有するほうがリスクは高いことを表します。

長期であるほど安定している、リスクが低い、と感じてしまうのはなぜなのか、過去にも考察がありますが、再度考えてみました。

たとえば「1日の値動き」を思い浮かべる時、その動きは偶然や気まぐれによって支配されています。所謂ファンダメンタルズは1日では動かないからです。それを私たちは「予想不能」「全く分からない」と感じます。一方「5年」という期間を思い浮かべる時、多分誰もが5年前から現在にかけての期間を思い浮かべるでしょう。するとその間の値動きは、それほど予測不能で不可解なものだったとは感じません。私たちは過去5年に何が起こったか既に知っていて、株価がそれを反映して動いたことを確認できますから、「予測不能で不可解だ」とは感じないのです。

しかしこれはフェアではありませんね。本当は今日から5年間の株価を予想しなければならないのです。5年後を予想することは、明日を予想することより遥かに難しいものです。起こりうるシナリオは、1日よりも5年のほうが遥かに多いからです。「リスク」の理解はかくも難しいもの。リスクが高くとも、投資は長期であるべき、という結論は変わりませんが。

→ 何年持てば長期なの?


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