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「配当を重視せよ」の意味するところ [投資スタイル]

私が常々「配当重視」と言っているので、「配当を出さない株は買わないほうがいいのか?」という疑問が当然湧きますね? この関連では一度書いたことがありますが、もっと整理して「配当を重視しよう」ということについてお伝えしようと思います。

① まず株式投資に対して、配当をもらうのは当たり前だということ。
「投資」はそもそも、何らかの収益を生む事業に財を投じて、その収益を得ることが目的です。「金融商品」という形になっていると、間接的で分かりにくいかもしれませんが、企業の株式や債券に投資する場合は、その企業の上げる収益の分け前を手にすることが本来の目的です。特に株式について言えば、利息や税などすべての費用を払った後に残る利益が、株主のものになるのです。配当もそこから株主の手元に支払われます。

ですから、株式に投資して配当をもらう、というのは投資の在り方の基本なのです。株式という形で事業に投資し、その分け前をもらう、という当たり前のことなのです。ところが株式は、上手く行けば容易に値上がり益を得ることができるため、当たり前のことが忘れられがちなのです。

特に日本では高度成長期に、株価が上昇する一方で配当利回りが非常に低くなり、配当に期待して株式投資するよりも、値上がり益を得るために投資することが主流になってしまいました。それは仕方のないことですが、事情の変わった現在でも、株式は値上がり益を得るものだと思っている人が多いのではないでしょうか。「配当を重視しよう」というのは、基本を思い出してほしい、ということなのです。

配当は多ければ多いほどいいとは限らないし、出さない会社が悪いとも限りません
どのくらい配当すべきかは、会社によって異なります。その前にまず、利益と配当の関係から順を追って説明しましょう。

会社の事業から「純利益」が上がると、それは株主に支払われる配当」と、会社の資産として残る内部留保」に分かれます。「内部留保」は会社の「純資産」(=資本)に加わります。「純資産」は株主の財産を意味しますから、「配当」として現金で受け取っても、「内部留保」として会社にとどまっても、どっちみち株主に帰属するのです。

「内部留保」は会社にとどまると言っても、現金のまま保管されるという意味ではありません。事業は継続しているわけですから、そのための資金となるのが普通です。「内部留保」として事業への投資に充てるべきか、それとも「配当」として株主に還元すべきか。ここで「ROE」が鍵を握ることになります。

ROE」は、資本が何%の利益を生むかを表したものです。「内部留保」は純資産(=資本)に加わりますから、同じペースで事業が継続されるならば、新たに資本に加わる「内部留保」もROEと同じ収益性があるはずです。ですからROEの高い企業であれば、配当として社外に流出させてしまうより、事業により多く投資して、どんどん売り上げを成長させるべきだ、ということになるでしょう。特に、需要が十分にあって市場が急速に拡大している場合は、まさに「配当なんか払ってる場合じゃない!」という感じでしょうか。

もちろん、他に考慮すべき条件は色々とあるでしょう。資本構成によっても、金利水準によっても、景気判断によっても下される判断は違ってくるとは思いますが、配当を出せばよいというものでもない、ということはお分かりいただけたでしょうか。

お金の使い道がないのなら、利益は出来るだけ配当に回していただきたいものです。
必要以上に「内部留保」を増やせば、資本効率はどんどん下がっていきます。ROEの分子である「利益」の増え方以上に、分母である「資本」の額が増えて行けば、ROEは下がっていく、ということです。

配当性向は、財務の安定性資本効率事業の見通しなど、バランスを取って決定するべきです。日本の上場企業の配当性向は、3割と4割の間にずいぶんと集中しているように見えますが、あるべき配当性向は、もう少し幅があるのではないでしょうか。過去の習慣と周りの動向を見ながら、何となく決めている会社が未だに多いのかもしれません。

割安株を探す時には、やはり配当重視がお勧め。
個別株を選ぶスタンスは、大きく分ければ「成長株」と「割安株」の2つです。
成長株」には今しがた説明したように、配当を出さないことが正しいケースも多いでしょう。配当利回りが高いうえに高成長が期待されるという銘柄が、もちろん絶対ないとは言いませんが、多くの成長株は、配当利回りも含め割高感があったとしても投資する、というのが普通です。ただ、それでも配当を全く出さない銘柄よりは出している銘柄のほうが、リスクは低い傾向にある、とは言えるでしょう。

割安株」を選ぶ方法も、利益を重視すれば低PER、純資産を重視すれば低PBR、そして配当重視の高配当利回り等々、色々あるでしょう。利益は変動が激しいという問題がありますし、純資産を基準にすると、右肩下がり・じり貧状態の銘柄が多く挙がってきてしまいます。

その点配当を重視すると、その事業は少なくとも配当を払えるだけの利益を上げているということになりますので、比較的良い企業を選ぶことができます。また、なかなか市場で注目されず、割安状態が長く続いても、配当という収入があれば、投資家にとって持ち続けるインセンティブになります。「保有する楽しみ」は無視できませんからね。

→ 配当と成長 (2019年7月31日)

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