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個人投資家でよかった [投資スタイル]


ここひと月あまりは、マーケットについての話になると、つい「どうして株価がこんなに強いの?」ということが話題になります。そう思っている人はきっと多いでしょう?

これがこの先どうなるかというのはとりあえず置いておいて、足もとで株価が上がっているのは、株式の需給が異常なほど良くなってしまったから、というのが一番良い説明かな、と思います。株式を売りたい人がそれほどいないところに、買いたい人が急に増えたというわけです。

新型コロナウィルスの感染拡大が始まって4月の初めごろまでは、この先どこまで悪くなるのか分からない、というのが社会の空気でした。3月に株価が大きく下落したのは、そんな空気を反映したものだったと思います。月末の動きは、決算期末という事情も影響していたでしょう。株価にとって一番良くないのは、この「どこまで悪くなるのか分からない」という時で、事態が「すごく悪いということがわかる」時ではないんですね。ま、振り返って言うのは簡単ですが、緊急事態宣言が出た後は、「すごく悪いということが分かった」気分に、どんどんなって行ったように思います。

需給が良くなった要因は、まずは株式を買うための資金が急に潤沢になったこと。そりゃそうです、13兆円近くを給付金として投げ込むんですから。報道によるとそのうちすでに4兆円近く支給されているようです。すぐにでもお金が必要な人のための給付金ですが、実際はもらってもすぐに使わない人がたくさんいるであろうことは、想像に難くありません。直接株式投資に回るのはほんの一部でしょうけれど、金融機関に預けた分も、現金のままそこに眠っているわけではありませんから、株式市場にも流れ込んできます。

需給はよいのですが、高みを目指してまだ当分上がり続けるのかと言われると、多くの投資家は答えをためらうのではないでしょうか。そこで冒頭の問いになります。どうしてこんなに上がるのだろう、と。

長い道のりをのんびり行こうという個人投資家であれば、こういう時は何もしなくて良いと思います。でも、機関投資家のように顧客のお金を運用している身であれば、そうのんびりとも構えていられません。3月までの下落相場で株式の持ち分を減らした向きも多かろうと想像しますが、そうなるとこんな時は大変です。

「持たざるリスク」というのは、長期的には個人投資家にも当てはまりますが、機関投資家は短期的にも、年がら年中このリスクに向き合っています。毎月、毎四半期、毎年、と期末には運用報告をしなければならないからです。

たとえば今であれば、6月末は四半期末でもあります。3月末から大きくマーケットが動いている。その間株式の保有比率が下がっていると、運用成果に大きな差が出る可能性もあります。もちろん理想を言えば、そんなこと気にしてはいけないんです。今は相場が強すぎる、足元の運用成績は市場に負けているけれど、長い目で見れば心配無用です、と思うならば、そう報告すべきなのです。

でもそれは本当に疲れる作業です。自分の見通しが必ず当たるわけではありませんから。そこでも自分の主張を通せるファンドマネージャーは、実績豊富なカリスマか、強い信念を持っているか、会社が強くバックアップしてくれるか…ふつうはそうも行きません。期末まで株価が上昇し続けたらどう報告するか、それぞれ戦略を練る。そして往々にして出てくる答えは、「顧客が納得しやすいレベルまで株式の保有比率を上げておこう」だと思います。

そうやってマーケットに出てくる「買い」がいつまで続くのか分かりません。分からないものは分からない、といって眺めていることができるのは、個人投資家の特権です。今買うべきではないと思えば、買わなくてよいのです。その間どんなにマーケットが上がろうが、誰にも報告する必要はありません。そのことがパフォーマンスにどのくらい影響するか、なんてことは検証のしようもありませんが、正しい判断をするのに頻繁な運用報告が邪魔になる、ということは確かだろうと思います。個人投資家だからプロより不利だ、などと思う必要は全くないのです。


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