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「労務」に始まり「労務」に終わった三菱電機 [株主総会]

先週の金曜日のいわゆる集中日は、ライブ配信で三菱電機の総会に参加しました。

事業報告も中期計画も立派にまとまっていて、特に申し上げることはありません。それよりこの総会、労務問題に始まって労務問題に終わった印象です。

中期計画の中でも、ESGへの取り組みの第一番は「従業員エンゲージメント」。会社人事の「エンゲージメント」というのは、最近の流行りなのでしょうか。耳慣れないのでピンときませんが、ここではそのために柔軟で効率的な働き方を取り入れて、いきいきとして働ける職場環境を実現する、と言っています。「情報セキュリティ―」という項目もありましたが、防衛関係の情報漏洩事件を受けての対応なのでしょう。当然ですね。

事前質問も労務問題から始まりました。これが争点となるであろうことは十分に予想されていたと思われます。2年前に私が出席した株主総会の時点でも、労務関係の質問が相次いだと記録があります。(→2018年の株主総会)2019年にも社員の自殺事件が1件。この時は教育係が書類送検されたんだそうです。

質問者の中には労務問題の活動家のような人もいて、事業所の門前でチラシを撒くなどの活動をしているのだそうです。彼女が言うには、社員が抑圧されているのを感じる、完全に無視するようにと会社から指示が出ているのだろう、と。方々で活動しているその道のプロ(?)らしく、別の企業ではもっと対応が良い、と他社比較までして見せました。

一番最後の質問も労務問題でした。元社員だという質問者は、ブラック企業大賞を受賞するなど元社員として情けない、と嘆き節。社内にはびこる情報隠蔽体質を正せ、それがパワハラ体質の原因だ、と一刀両断です。ついでに、防衛庁の漏洩事件も隠そうとしたではないか、と。社内から見ていた株主ともなると、おっしゃることが真に迫ってますね。

こうした質問に対する答え、要はパワハラ防止策として何をやっているかということですが、列挙しますと、
 社内の風土改革
 ハラスメント防止教育の実施
 個々の社員の心の変化を把握するため、毎月一回アンケートの実施
 外部カウンセラーの導入

そこで社長がひと言、現場を訪ねて若手社員の話を聞いている、と話す場面もありましたが、次の質問者に、社長が訪問して本音が聞けるとでも思ってるのか、と言われてしまいました。おっしゃる通りです。認識が甘いと、自ら暴露してしまったかも。

私としては、内部通報制度がこの中に挙がっていないのが不満です。そういう制度、無いのかしらと思っていたら、2年前の総会レポートでは、「パワハラについては内部通報制度があります」というくだりがありますね。あっても機能してないんでしょうね。どういう通報制度なのか知りませんが、人事部に通報するんじゃだめです。外部の法律の専門家とか…とにかく社内と結託しない「外部」が必要だと思うんですよね。

2年前はそれほど深刻にとらえていませんでしたが、事ここに及んで、この社内のパワハラ問題は喫緊の課題に育ってしまったようです。パワハラ防止、ではなく、パワハラ体質の払拭、というのが正しいでしょう。事件が繰り返されたと言うだけではなく、社会の労務環境に対する目が急速に厳しくなっています。企業のブランド価値が思った以上に棄損するリスクがあります。

労務問題の一部ではありますが、女性の登用についての質問もいくつもありました。現状は従業員の9.7%、管理職中の3.9%が女性だそうです。いわゆる大企業は、今どのくらいが平均なのでしょうね? 

平均がどうかはともかく、社内のパワハラ体質も隠蔽体質も、職場における多様性の欠如と無関係ではない、と言えるのではないでしょうか。女性や外国人、転職組の多い職場は隠蔽体質になりにくいと思いますよ。阿吽の呼吸も通じませんから。だからと言って、急に女性を増やしたり中途採用を増やしたりするのは現実的ではないかもしれませんが、そういう体質の会社なのだとすれば、普通以上のことをやらなければいけない、ということです。

例えば、多様性の向上のために目に見えるほど女性の比率を挙げようと思えば、「女性でも優秀だから採用する」のでは足りなくて、「とにかく新規採用の技術者は最低3割女性にする」というような発想が必要だと思うのです。

難しいのは、多分経営幹部の皆さんは、従来の体質が居心地よいから偉くなってる方々だということ。多様性を強化するには、これまで居心地のよかった種類の人々に犠牲を強いるということです。そんな風に考えると、それなりに覚悟を持って臨まなければならない問題と言えそうです。昔から割と好きな会社なので、真剣に向き合ってほしいですね。

→ 2018年の株主総会
→ 三菱電機の思い出話
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