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「ガバナンス」について 頭の体操 ~ 日産の株主総会 [株主総会]

株主総会のネタが5社分も溜まってしまいました。時系列に逆らって、後入れ先出しでご報告します。

まずは月曜日にライブ配信で参加した日産。誰もが知る「事件」もあって、昨年は当初の予想を遥かに超えて、業績も株価も低迷したわけです。会社からの事業報告は、掻いつまんで言えば、むやみな成長戦略を反省し、戦線を縮小して足もとを固めます、ということ。生産拠点を減らす。投入モデル数を絞る。マーケットも日本・中国と北米以外はアライアンスに頼る。経費削減、選択と集中

会場の株主からの質問は従来通り整理券方式。当然ながら厳しい質問が並びました。主なものを、出てきた順に列挙してみましょう。

1. 社外取締役のうち執行役を兼ねていない9名の報酬削減が無いのは何故なのか。昨年から在任の取締役は責任があるのではないか。報酬削減すべきではないか。管理職も報酬削減の対象ではないか。

2. ゴーン氏の件で何か発言することはないのか。

3. 社内の取締役はルノー3名に対し日産2名。フランスは車の技術で劣っていると思うが、このバランスで大丈夫なのか。

4. 日産の将来に大変な危機を感じる。大改革が必要と考えるが、そのためには強力なリーダーシップが必要ではないか。一体だれが本当の日産のリーダーなのか。こんな体制では危機を乗り切れない。取締役の筆頭が社外とは一体どういうことか。内田社長の意思は経営に通じているのか。

5. 不透明だから通期予想を出せないというが、トヨタは具体的な数字を発表している。サプライヤーを安心させるためには必要ではないか。

6. 電動化で打開策というが、他社も電動化には注力している。それだけで日産が戦えるとは思えない。トヨタのスマートシティ構想や、ホンダのロボットまたは航空機に負けない将来の姿を描いてほしい

7. 技術者がいくら優れていても力を発揮できないのは、知財の面が弱いのではないか。

8. 「信頼」を失ったことが最大の問題ではないか。ゴーン氏の不正と決めつけているが、日産は彼に弁明の機会も与えず、検察と組んで留置場に放り込むような姑息なやり方をする会社、と思っている人も多い。この事態をどう回復するのか。

9. 日産は「売れる車」を作っていないと思うが、その認識はあるのか。電気自動車も、先行したはずなのに売れていないではないか。

整理券方式ですと、事前に時間をかけて準備しているはずなので、もちろんすべての質問が的を射ているとは言いませんが、耳を傾けるに値する質問が多いように思います。

質問の焦点は、業績に関することももちろんですが、日産の場合はガバナンスに絡む質問が特に興味深いのではないでしょうか。あのような事件があって、委員会制度が有効に機能するのか、関心の集まるところです。

1の質問に対する報酬委員長の回答は、「執行と監督の分離」ということです。執行役を兼ねない取締役は監督が任務であって業務の執行に責任はない、だから報酬も減らない、というわけです。それが教科書の答えなのでしょう。でも質問の後半にも頷ける点はあります。

監督した結果「よし」とした経営陣が、あのような事件の発生を許し、その結果業績が悪化しているんですよね?でも監督者に責任はないという。では監督とは何をすることなのだろうかという疑問が湧くのは、ごく自然な成り行きであるように、私には思えます。私もよく分かりません。はっきり言ってしまえば、ガバナンスの教科書は正しいのか、という疑問です。監督と執行は、本当に分離できるのかという疑問です。

4の質問も、ガバナンス制度に対する疑問といえるかもしれません。もしかすると、ガバナンスというものが、宿命的に負っている矛盾のようにも思えます。

日産の招集通知を見ると、取締役は明らかに社外が中心となっていることが分かります。取締役会の議長をはじめ、指名・報酬・監査の各委員長は当然社外、数のバランスも、社外7名に対し社内は5名です。こういうのがガバナンス優等生なんですね。そして取締役の序列の後ろから3番目に載っている社長が、業務執行の責任を負っている。でも本当にそれでリーダーシップ、発揮できるんですか?というのが4の質問なわけです。
 
この質問者は多分、質問の常連なのでしょう。元社員かもしれません。初めに、質問は一人1問2分以内で云々、と注意事項の説明があったにもかかわらず、完全無視。計っていませんでしたけど、15分くらいは演説なさってたんじゃないでしょうか。

「ガバナンス」と「リーダーシップ」というのは、そもそも相容れない部分があります。経営者の独裁を防ぎ、暴走を止めるのがガバナンスの役割のひとつですから、当然と言えば当然です。両者のバランスがうまく取れていることが理想なのでしょうけれど、日産のように過去に深刻な問題が発生すると、そのバランスがガバナンスのほうに傾いてしまうのではないか。しかも強力なリーダーシップが何よりも必要な時に。一旦バランスが崩れると悪循環に入ってしまうのではないか…。4の質問者の心配は尤もなことです。

それから8の質問も、相当深刻ですね。ゴーン氏の件についてはスキャンダラスな取り扱いもされているでしょうし、実際様々な見方があるのでしょうが、「事件」によって失われた日産ブランドの価値の大きさを改めて認識させられます。

ここで話題に取り上げた質問は、会社の回答で質問者が納得できるようなものではないかもしれません。日産という会社の問題であるだけでなく、もう少し幅広く、会社のガバナンスということについて考えさせられます。しかし、これがもしもバーチャル・オンリーの総会で、質問を会社が選択できるとしたら、有意義なQ&Aにはならなかったかもしれません。事前チェックされない質問は、やはり必要でしょうね。

余談ですが、7の「知財」の質問の中で質問者が、見習うべき企業としてデンソーと三菱電機を挙げていらっしゃいました。三菱電機は知財に注力しているという話を、2年前に投稿した記事の中で触れているので、知っている人は知っている、とちょっと嬉しくなりました。ちなみに次回の投稿は、「三菱電機の総会」の予定です。


→ 2019年 臨時総会
→ ゴーン氏 逮捕劇
→ 2018年 株主総会
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今週は4社のバーチャル総会に参加 [株主総会]

今週は4社のバーチャル総会に参加。

23日火曜日にユー・エス・エス、24日(水)がソフトバンクで翌25日(木)はその親のソフトバンク・グループ、集中日の26日(金)は三菱電機の総会を、それぞれライブ中継で参加しました。あと、週明けの月曜にもどこか参加しますけれど、ここでバーチャル総会という総会の在り方についての感想をまとめておきます。

バーチャル総会、つまり総会のライブ配信を実施した企業がこの6月は何割ぐらいだったのか、集計している人がいるのかどうか知りませんが、主要な大企業に限れば3割ぐらいはあったのかな、という感じでしょうか。参加する株主の立場からすると、個々の企業について、ライブ配信があるのかどうか、招集通知で探すのが案外大変でした。

まず配信があるのかどうか分からないうえに案内の形式が定まっていないので、表紙から裏表紙まで、目を凝らして探すことになります。あるものを見つけるのは比較的簡単でしょうが、無い場合に「無い」と書いてあるわけでもないので、なかなか見つからないときは何度も見返して載っていないことを確認しなくてはならないわけです。

招集通知というのは、どこに何が書いてあるかだいたい決まったパターンがあるのですが、配信についてはまだ初めての会社がほとんどですから、もう色んなパターンが混じっています。招集通知の表紙だったり裏表紙だったり、開いて最初のページだったり最後のページだったり、議決権行使の案内に続いてあったり、参加にあたっての注意事項と一緒に書かれていたり、または別紙で招集通知に同封されているケースもありました。

ライブ配信を視聴する手続きも様々です。前の週に参加したエーザイは申し込み制の参加型でした。23日のユー・エス・エスは特に手続きの要らない参加型。24日と25日のソフトバンクとソフトバンク・グループは「出席型」のみ事前登録が必要ですが、「参加」するだけなら手続き不要。そして26日の三菱電機は、事前の申し込みは不要ですが、議決権行使書に記載されたパスワードが必要でした。

申し込みを忘れてしまったのは、ソフトバンクとソフトバンク・グループ。ここはまだ珍しい「出席型」の選択肢があったので、ぜひ「出席」してみようと思っていたのに、申し込み期限をうっかり過ぎてしまったのです。招集通知を受け取ってから申し込み受付が始まるまでに間があったので、忘れてしまったようです。

「出席型」というのは、総会を視聴するだけではなくて、その場で議決権を行使したり、動議や質問をしたりできる、というわけです。そのあたりの様子も体験してみたかったのですけれど、残念でした。議決権を伴わずに「参加」するだけなら申し込みも何も必要ないので、総会を見ることは問題なくできました。

配信のシステムも色々あるのでしょう。三菱電機はプリミティブというか、リアル株主総会の会場に持ち込んだカメラで壇上のメインスピーカーを映し、ビデオやパワーポイントの資料を見せる時は、そのまま同じカメラで会場のスクリーンを映していました。多くの総会では、壇上で話すスピーカーを映したり映像や資料を画面シェアしたり、というのが普通なのではないでしょうか。エーザイは画面で資料をシェアしながら右横にスピーカーが映る、というスタイルでした。

ソフトバンクとソフトバンク・グループは他と違っていて、原則リモート開催、出席の取締役も、すべてバラバラの場所から画面を通しての参加で、Zoom会議のような様相。画面は議長の話す姿が映っているか、資料やビデオをシェアしているかで、その他の取締役は全然しゃべりませんでした。折角ウェブ会議のようなシステムなんですから、他の出席者にも少しは話してほしかったですね。ちょっと気になったのは、子会社のソフトバンクに出席していた孫さん、何となく映っているのが静止画だったような。疑うつもりもないんですが、ちゃんと出席なさってますよね? 

体験し損ねた「出席型」ですが、議長の説明によると、リアル総会に出席の株主も、どうやらバーチャル出席の株主と同じように画面を通して参加するというやり方です。議決の際の投票は画面のボタンをクリックし、質問はキーボードで入力する。その場に来た株主がいらっしゃるのかどうかは分かりませんが、はっきり言って行っても意味がありませんね。

議決にかかる時間は極めて短く、投票から結果の集計まで数十秒です。そうなると、通信のトラブルがあった場合は困ったことになりますね。投票し損ねてしまうと思います。本当にあっという間ですから。

今回のソフトバンクやソフトバンク・グループのように、バーチャル出席のみで行うとすると起きてくるガバナンス上の問題、ソフトバンク・グループの総会で質問にあったのですが、質問を入力方式のみにすると、都合の悪い質問は取り上げないことができるのではないか、という点です。その時の孫さんの回答は、やはりまたリアルの場でもやりたいですね、と。

議決権を行使する立場からいうと、バーチャル総会は大きなメリットがあります。先週ここに投稿した中に触れましたが、リアル総会の場での議決は「拍手による賛同」です。反対の意思を表明する手立てはありません。結果は決まっていても、賛同したくないことはありますよね? バーチャル出席であれば、その場で反対の意思表示もできるわけです。(実際に体験できなかったので、「多分そのはず」ということです。)参加型であっても、事前に議決権を行使したうえで総会に参加できるのですから、その点はリアルのみの総会より大幅な前進だと思います。

ずいぶんと長くなってしまいました。バーチャル出席については、まだ問題が無いわけではありませんが、多くの総会の場合、ライブ配信を行うことはメリットが大きいと思います。ぜひ今後も多くの企業で取り入れていただきたいですね。

個々の総会については、後ほど別途投稿します。

→ 「バーチャル」の導入で、改めて考えてみる「株主総会」
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配信で総会 ~ エーザイ [株主総会]

昨日は、エーザイの株主総会をライブ配信で視聴しました。
リアルの参加者が何人あったか分かりませんが、通常より大幅に少なかったであろうことは想像に難くありません。当然質問や意見も少ないでしょうから短時間になるだろうとは思いましたが、45分で終わりました。盛り上がりませんけど、仕方ありませんね。

エーザイはガバナンス優等生ということになっています。ポイントは、取締役11人中7人が社外取締役、つまり過半数ということ。私は社外取締役制度の信奉者ではないので、個人的にはこれをもってして素晴らしいというつもりはないのですが、コーポレートガバナンス業界ではそういうことになっているのです。

Q&Aの最後には社外取締役の一人が回答していた中で、「社外取締役サポート体制が素晴らしい」という話がありました。社外取締役を多く任命しただけで安心してはいけないわけで、これを有効に機能させるために努力しているということですね。社外取締役をガバナンスの柱として非常に重視しているのが感じられます。

取締役の多様性については、外国人1名、女性1名ですから、優等生にしては割と普通です。職業的なバックグラウンドでは、法律や金融部門からの社外取締役が目立つ一方で、医療関係からはいらっしゃいません。取締役会は経営の専門家で、という感じはアメリカンスタイルでしょうか。社外取締役という制度については、私としては色々と突っ込みたいところはあるのですが、ここではやめておきましょう。

社長(CEO)のプレゼンテーションは、前へ出て歩きながら、両手を動かして表情豊かに…という米国企業でよく見るスタイル。良いと思います。10年前のブログでも触れてますね。

この会社の株主総会招集通知は、ちょっとした雑誌ほどのボリュームで、事業報告もコーポレートガバナンスも研究開発も内容は非常に充実、さらっと読んだくらいでは消化できません。これだけの内容を、総会ではどんなまとめ方でプレゼンテーションするのかと思ったら、冊子の内容とは関係なく、認知症への取り組みを中心としたプレゼンテーションでした。

会社の原点を「認知症に対する取り組み」と定め、認知症に強い社会をつくるためのプラットフォームとしての役割を果たしたい、というメッセージは好印象でした。薬をつくるだけではなく、金融なども巻き込んで幅広く社会とつながる…なかなか壮大な感じですね。分厚い冊子のほうは、暇があったら改めて読んでみようと思います。

余談ですが、この銘柄を保有しているのは私の親で、自分名義ではありません。本来株主総会は株主本人が出席することになっていて、招集通知に明記されている場合もあります。しかし実際は、受付で本人確認されることはなく、議決権行使書を持っていれば出席できる、というのが実態です。私も前回エーザイの総会について書いた10年前は気にしていませんでしたが、その後本来あるべきルール通り、自分名義の銘柄に限ることにしていました。ところがネット配信となると、議決権行使書を持っていれば、本人確認のプロセスが無いシステムになってしまいましたので、家族名義の総会も見せていただくことにしました。この「本人に限る」という規定も、リアル・バーチャルに関わらず、ほとんど有名無実化しています。

「参加型」であればネットを通して議決権行使はしないので、それでも構わないと思いますが、「出席型」ですと法的な効力が生じます。実態に合わせて「議決権行使書を持っている人が総会に出席する権利を持つ」というルールにしたほうが、すっきりするのではないかと思いますけれども。

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昨日の続き ~ 伊藤忠の招集通知 [株主総会]

今日は昨日の続編、というか、追加です。

昨日のブログで、「伊藤忠商事の株主総会招集通知には、『株主総会は役員だけでやっておきますから株主の皆さんは来ないでください』というような書き方になっているけれど、ガバナンスの観点から問題があるのではないか」というようなことを書きました。

実はこの文言、経団連のホームページに、二種類示されたお手本のうちの一つとして、掲載されているんです。経団連がそう言ってるんだからいいじゃないか、と思う人もいるでしょうが、私は、経団連ともあろう団体が…という感じを持つわけです。
実際、二つ示された文例のうちこのパターンを選んでいる企業は、少なくとも私が受け取ったものの中では伊藤忠商事だけ。ほとんどの企業の総会担当者から見ても、やはり妥当ではないと思われたのでしょう。

伊藤忠は業績も株価も好調過ぎて、どこか感覚がずれているのでは?と心配になります。今朝の新聞でも、テレワークに否定的、と出ていましたね? 今は効率が悪いと思っても、先を見据えれば取り入れていかざるを得ないのではないでしょうか。

伊藤忠商事は社外取締役に、信頼する村木厚子氏も名を連ねていらっしゃって、ガバナンスも安心なのかな、と思っていましたが、好調だったばかりに足元掬われる、なんてことになりませんように。


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「バーチャル」の導入で、改めて考えてみる「株主総会」 [株主総会]

株主総会のハイ・シーズンです。今年はライブ配信で参加します。と言いながら、バンダイナムコが、「抽選で当たれば総会に出席できる」という方式を採用していたので、応募してみました。結果はハズレでしたが。

前々回の投稿で、総会をリアルと同時にライブ配信するハイブリッド型に、「参加型」と「出席型」があるというお話をしました。「参加型」は単なるライブ配信とほぼ同義で、株主として法的に出席していることにはなりません。現状ではこれが主流です。これに対し「出席型」法的に効力のある「出席」です。そこで議決権行使もできるし、動議も質問も可能です。出席している株主の票は法的に有効なのですから、本当に出席しているかどうか確実でなくてはなりません。なりすましは防げるのか、本人確認はできるのか、配信がトラブって途中で切れたら議決権の扱いはどうなるのか、総会中の質問はどのように受け付けるのか、等々、周到な準備が必要でしょう。

慎重な日本の企業は、今年はまだ「出席型」は採用しないのだろうと思っていましたが、日本企業らしからぬところが一社、上場子会社も含めれば二社から、「出席型」のハイブリッド総会を行うとの招集通知が来ました。ソフトバンクグループと、ソフトバンクです。何といいますか、流石ですね。

「出席」と「参加」の最大の違いは議決権の扱いであるわけですが、そもそもリアルの株主総会の場で、どのように議決権が扱われているかと言えば、議決権行使書の郵送やインターネットで行使する場合とはかなり異なります。法的に何が正しいかということは置いておいて、事実上行われていることは「拍手による賛同」のみです。個別に反対したいと思う議題があっても、意思を表明する手立てはありません。議決権行使書は受付で回収され、各株主は総会の場で拍手によって賛同することになっているのです。総会の場で「反対」が議決されるということがあるのかどうかわかりませんが、いずれにしてもその場で全員一致の「拍手」に参加するのみです。

もっと現実的なことを言えば、ほとんどの株主総会は、始まる前から議決権の事前行使によって、既に結果が分かっています。はっきり言ってしまえば、総会は議決の場としての役を果たしてはいないということになります。かつては総会が議決の場であることを盾にとって活動する総会屋さんという人たちが存在しましたが、健全化の進んだ現在はそれもなくなりました。審議しましょう、議決しましょう、というのは、現実には「お芝居」のようなものなのです。

だからと言って株主総会に価値が無いわけではありません。それは情報公開の場であり、株主とのコミュニケーションの場として大切な役割を果たしています。会社にとって重要な決断を発表したり、会社の進む方向や目標を示し、決意表明したりするには、株主総会という正式な場は、最も相応しいと思います。そう考えると、今後一般化すると思われる株主総会の同時配信は、コーポレートガバナンスの強化という意味でも、画期的なことと言えるかもしれません。

今年の株主総会は、ライブ配信を行う会社を除けば参加者が大幅に減るわけですから、ガバナンス面では残念ながら一歩後退です。特殊な事情ですから、それは仕方のないことです。ただ、今回受け取った招集通知の中で、いくら何でも問題があるんじゃないかと感じたケースが一社ありました。

その招集通知には
「株主の皆様にご来場いただくことなく、当社役員のみで開催し、~(後略) 」「当社株主総会へはご来場されないようお願い申しあげます。」
と書かれています。株主に向かって、「株主総会は役員だけでやっておくから来ないでね。」というわけです。ライブ配信の案内も無いようですね。

これは伊藤忠商事から届いたものですが、これほどの大企業が行っていることですから、法的な問題はないということなのでしょう。そうであっても、これは常識の問題ではないでしょうか。昨今コーポレートガバナンスということについては日本も厳しくなりましたが、多くの企業にとっては「何をやっておけば許されるのか」という課題であるに過ぎないのかもしれません。

もちろん「形」は重要です。ガバナンスというある意味曖昧な概念を客観的に判定するには、形式的な要件を満たしているかどうかは重要です。しかし、いわゆる仏像掘って、なんとやら、になっていないか、それは案外「常識」の世界のようにも思えます。そうなると、機関投資家より個人投資家が活躍しなくてはいけないのかもしれません。

経済産業省では、新型コロナ対策として株主総会をどう執り行えばよいか、という指針を示しています。もちろん伊藤忠のようなケースはその範囲にはありませんが、お役所としては、「会社法で定められていることであり、民間の主体同士の話ですから、役所からああしろこうしろというべきことではない。」というのが公式な立場のようです。

ガバナンスというのは個々の株主と投資先の企業との関係で成り立っている、というわけですね。そう考えると、やはり株主総会はより良いガバナンスに貢献し得る機会なのではないでしょうか。欲を言えば、株式会社の法体系も、実態に合ったものにしてもらえるといいと思うのですが、法的な存在と実態の乖離を、専門家はどう考えているのでしょうね。

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今年の株主総会はバーチャルで [株主総会]

2か月以上に及んだ自粛期間中、オンラインで仕事をすることが当たり前のようになっている人も多いのではないでしょうか。仕事だけではなく飲み会さえもオンライン化していますね。

私も、飲み会こそ試してはいませんが、自宅でZoomはかなりの稼働率です。会議もセミナーも、快適にこなせています。YouTubeでは、これまでなかった数のライブ配信が流れています。あちこちの記者会見やニュース映像、ミュージシャンは自宅ライブ、スポーツ選手ではトレーニングプログラムなどを見せている人もいます。オンラインの世界が一気に広がっているのをひしひしと感じます。

さて今週あたりは、2月決算の株主総会が多く開催されていたはずです。今年は緊急事態のため、来月の分も含め延期が認められているとのことですが、ほとんどの企業は予定通りに行うのではないでしょうか。ただし、予定通りに行われると言っても招集案内には、書き方は色々ですが要は、「できれば来ないでほしい」というようなことが書いてあります。私も今月は一社も参加しませんでした。6月は株主総会のシーズンですが、どうしようかと思案中です。

6月分の招集通知が届くのはこれからですが、今年はライブ配信が増えるのではないかと、少し期待しています。これまでに総会のライブ配信をしていた企業で主に思い当たるのはソフトバンク日産ぐらいですが、今年はどうだろうと検索してみると、検索画面には大量の広告。「株主総会のネット配信をサポートします」というサイトがずらっと並びます。これから一気に普及に勢いが付きそうです。

6月予定の株主総会のうち、先頭切って届いたのはエーザイの招集通知です。かなり以前からIRに熱心な会社だったという印象がありますが、ライブ配信は今回が初めてでしょう。早速申し込んでおきました。

ライブ配信による株主総会の視聴は、「ハイブリッド参加型バーチャル株主総会」という類型の株主総会です。「ハイブリッド」というのは、会場に物理的に集まって行う従来の「リアル株主総会」に加えて、「オンラインによる参加も有り」ということを意味します。

「参加型」というのは、オンライン参加の株主が法的な「出席」ではなく、「傍聴」に近い「参加」であることを意味します。その場で議決権を行使することはできませんので、議決権を行使する場合は、従来のやり方で「事前行使」することになります。また、会場の株主に認められる「質問」をすることはできませんし、「動議」を出すこともできません。但し今後は、チャットのような方法で、オンラインでコメントを送ることは認められるようになるかもしれません。

オンラインを利用した株主総会の形としては、このほかにも「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」、「バーチャル・オンリー型株主総会」があります。

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「バーチャル・オンリー型」というのは読んで字の如くですが、物理的に集まることなく、オンラインのみで株主総会を行う、というスタイルです。将来的にはそういう形も認められるようになることは大いに考えられますが、現行の会社法のもとでは無理があるとのことですから、実現するとしてもまだ少し先のことになるでしょう。

これに対し「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」は、実務的に可能かどうかという問題はありますが、法的には開催することが、どうやらできるようです。ただ、この「実務的に」というあたりは、そう簡単にクリアできるとも思えません。

さらに、この「ハイブリッド出席型」を巡る問題点について考えを巡らせていると、そもそも現行の株主総会というものが、ほとんどの上場企業において、形式的なもので実質的な議決の場ではない、つまり単なる儀式である、という現実に目を向けざるを得なくなるように思います。

株主総会のオンライン化で見えてきた色々なことについては、今回は長くなりますので続編で。いずれにせよ、今年の株主総会は、出来る限りライブ配信を利用してみようと思っています。何社ぐらい参加できるのか、招集通知を楽しみに待ちましょう。


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こんな時の株主総会その2 LINE [株主総会]

こんな時の株主総会、26日木曜日はLINE。
これ、可愛いでしょう。会場で配っていました。

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こんな時ですから会場は閑散、広いホールに50人もいないように見えます。最前列は私を除いて若い人ばかり。奥の端のほうは背広姿、ビジネスの関係の株主でしょうか。反対側の端にはインテリ風の面持ちの男性二人連れ。ど真ん中には在宅勤務中の大企業サラリーマン、という感じの男性。もう一人はオタク・ファッション全開といいますか、Tシャツにジーパン、坊ちゃん刈の男性です。2列目より後ろは老若男女、女性も結構いらっしゃいます。こんなに少ないと、つい参加者を観察したくなってしまいます。

ここの株主総会は今回が最終回。せっかく投資したというのに、あまりにも短いお付き合いでした。まもなくZホールディングス、かつてのヤフーですが、そこと経営統合して、LINEという上場会社はなくなってしまいます。今あるLINE株にはTOB*がかかり、全株式が買収されます。嫌だと言っても、放っておくと現金になって手元に届くのです。

一般的な事業報告のあと、どうして経営統合するのか、大変よく説明していただきまして、その経営判断については納得いたしました。要は、グローバルな競争で生き残るために規模が必要ということです。そして納得した結果、持ち株を売らされる既存株主。「スクイーズアウト」という方式なのだそうですが、締め出す、という意味ですね。

つまりこの株主総会というのは、LINEのビジネスが将来的に成長していくための戦略について株主に説明し、その結果株主は、その成長の機会に参加する選択肢を与えられないまま追い出されるのを納得させられる、という不思議な会なわけです。

買収価格は上場後の最高値よりも高く設定されています。それが十分に高くて既存株主が皆満足、ということなら良いのでしょうが、将来性に期待してリスクを取ろうと決めた投資家にとっては、どちらかと言えば残念な話でしょう。保有している会社が買収や合併で事業再編されると、新しい会社の株主になれたりすることもあると思うのですが、スクイーズアウトはそれを許さないのです。

そもそもLINEは上場していると言っても、7割以上を親会社が保有したままという会社ですから、マーケットで買って持っている株主というのは、親会社のやっている儲け話にちょっと参加させてもらっていたという恰好のようにも見えます。それで親会社の気が変われば追い出されることにもなるわけですね。

Q&Aで、LINEの株主で良かったと思える日は来るのでしょうか、と質問している株主さんがありました。IPOで、5人のお子さんそれぞれのために買ったのだそうです。子どもと共に会社の成長を見守る、って素敵なお話ではありませんか。でも質問を聞いていて、この方、自分がスクイーズアウトされることを理解してらっしゃらないのではないかとちょっと思いましたので、そのあと私が質問という形で確認させていただきました。株主はTOBに応じて売却する以外、実質的に選択肢はないのですよね、と。だって、もし誤解していて、期待を持ったまま家に帰る株主がいたら、かわいそうではありませんか。

LINEという会社が良い企業だったかどうかは、実はあまりよくわかりません。ただ、成長株らしい成長株があまりにも少ない日本市場の中で、成長市場のメインプレーヤーだから、とりあえず投資してみたわけです。成長市場の動向を知ることもできるだろうと、株主総会も楽しみにしていたのです。TOBで戻ってきた資金で新生Zホールディングスに投資すればいいじゃないか、とも言えますが、それはやはりまた別の会社です。新しくなってから改めて考えるしかないでしょう。

気になるど真ん中のTシャツの方も質問なさいました。ゲームコンテンツに関わる内容。期待に違わず、オタクっぽさ漂う質問で、私には理解できませんでした。バンダイナムコの総会をほうふつとさせます。(笑) 

その他にも、もう自分の投資先ではなくなるというのに、事業に関する質問がいくつか。こんな時の株主総会に出席する株主は、さすがに皆さん真面目です。

最後の質問は、今年は株主優待ないのでしょうか、と。回答は言わずと知れたこと。もうこれから株主ではなくなる人たちのために優待なんて…。


TOB(Take Over Bid)
⇒ あらかじめ期間や株数、価格を公開したうえで、市場を通さずに株式を買い取る行為。
詳しくはネットで検索してください。いろんなサイトにヒットします。
ただ、通常はTOBで売りたくなければそのまま保有できるのですが、今回のスクイーズアウトでは、その選択肢が実質的にないということになります。


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こんな時の株主総会その1 花王 [株主総会]

こんな時の株主総会、25日水曜日は花王でした。
こんな時なので、会場に入るところで検温。サーモグラフィというんでしょうか。そして当然のように手指の消毒。会場内はスカスカに並べられた椅子。でも、快適ですね、隣との距離が離れているって。通常に戻ってもこんな風だと嬉しいです。

社外取締役、向井千秋さんのすぐ前に席を取りました。宇宙飛行士なんて頑強な体をイメージするわけですが、小さい方だったので意外でした。テレビで拝見するとたいてい一人で映りますから、イメージが独り歩きしてました。

増配にこだわる花王、2019年度で30期連続を達成しました。売上は減収となってしまいましたが、10期連続営業増益とのことで、相変わらずの優等生ぶりです。年度後半、消費増税もありましたし、HK情勢や米中摩擦などもあってインバウンドが不振だったようです。

製品分野別の動向は、「メリーズ(紙おむつ)の低調を化粧品がカバーした」年だったそうです。紙おむつの含まれる「ヒューマンヘルスケア」の利益が107億円減ったのに対し、化粧品部門が137億の増益になっています。メリーズの不振はインバウンド客の減少と関連していまして、一時期中国からの客が転売目的で大量に日本で購入していたものが減っているのです。2017年のピーク時は元高も手伝って、転売は非常に利が乗っていたようですが、その後転売に課税されるようになったり元が安くなったりで、需要が減りました。インバウンドの特需ははげ落ちたけれど、紙おむつはグローバル市場ではまだまだ成長に期待しているとのこと。

化粧品の好調は、何か目立ったヒット商品があるわけでもなさそうで、絞り込んだブランドの戦略が上手く行っているのでしょう。アジアでの売り上げが好調、とのこと。化粧品のページに、新製品として「ファインファイバーテクノロジーを応用」と注釈のついた美顔器なのか何なのかよくわからないものが掲載されています。その「ファインファイバー」というのが新技術らしいのですが、何だかよくわからないので質問してみました。

読んで字のごとく「微細な繊維」。それを吹き付けて人口皮膚のようなものを積層させる、という発想です。写真のあった製品は一種のスキンケアのパックのようなものみたいですが、ゆくゆくは医療用の治療に使えるようにしたいのだそうです。もう15年来研究している技術で、発想のタネは紙おむつに使われる不織布です。もっと違う不織布が出来ないものかというところから始まったという話でした。医療分野でモノになれば面白いですね。

新型コロナウィルスについて、花王はどう思っているのか、何ができるのか、という話もありました。もちろん薬を作っているわけではありませんが、菌の研究や衛生環境を作る研究は元からやっているわけで、界面活性剤は類似の菌の繁殖力を抑えるのに有効だそうですよ。新型コロナウィルスに有効かどうかは研究が待たれるといったところ。

感染しないために手洗いとマスクが有効、というのはもう常識なんでしょうけれど、マスクの効用のうち「手が顔に触れるのを防ぐ」ということも案外大事だよ、と。花王の調べによると、女性は平均して1分に1回顔を触るんですって。本当でしょうか。

ウイルスは口から入っても胃に入ってしまえば大丈夫なんだそうですが、喉の上気道に付いたウイルスが拡散しないようにする研究も・・・ということでお湯に溶かして飲む粉末の製品が「総会みやげ」に入ってました。喉が潤う、ということのようですが、感染防止に効くかどうかは分かりません。

写真は創業間もない1890年に発売した花王石鹸。木箱に入ってます。復刻版、商品化してほしいですね。

→2017年の株主総会
→2013年の株主総会

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エイチ・アイ・エスの株主総会 [株主総会]

昨日はエイチ・アイ・エスの株主総会がありました。
10月決算の企業はなかなか無いので、この時期にポツンとあるこの総会は、何度か出席しています。例の肺炎の影響なのか、今年は出席者が少ないように思いました。
こういう若い会社は熱心な株主さんたちが活発に質問や意見をなさるので、それが興味深くて学ぶところも多々あるのですが、昨日はちょっと盛り上がりに欠けたかな。

事業報告の最初に、「観光バスの安全性の確保」というトピックを持ってくるセンスは好ましいですね。新しくて派手なことをひけらかすのではなく、地味で大切なことを大切だと。そういう何でもないように見える事業が、往々にしてキャッシュカウだったりします。

Q&Aの最初は、宮城県に建設予定のバイオマス発電所の件についてでした。このプロジェクトが国際的な環境団体から反対運動を受けている、という話。実は不勉強なことに、私、全くこの件について知りませんでした。この数人あとにもう一人、別の株主がこの件について質問したんですが、それを聴いていると、国際的に大問題になっているような話です。そんな大問題、どうして気づかなかったんだろう、と思いながら、帰宅後に検索してみました。

社名のニュース検索では見つからず、「エイチ・アイ・エス 発電所」でやっと出てきた記事によりますと、この発電所の発電燃料はパーム油で、それが環境に悪いと非難されているというのです。バイオマスというと、生物由来の廃棄物というイメージでしたが、パーム油も含まれるんですね。廃棄物ではなくても生物由来だから再生エネルギーには違いないのですが、燃料として使うようになると、パーム油生産のために森林破壊が進み、結局環境に悪いのだ、というわけです。「環境」の世界では、どうやら市民権を失いつつある発電燃料のようなのです。

エイチ・アイ・エス、というか澤田社長は、「エネルギー」の事業としてのポテンシャルを感じ、「再生可能エネルギー」の利用を進めなくてはいけないという社会的ニーズもよくわかって参入しているのでしょうけれど、必ずしも「環境」事情に通じてはいないように見えます。せっかく発電事業に関わろうというのに、それがパーム油というのは、私の素人感覚でもちょっと違うような感じがします。今のところ事業をやめる予定にはなっていないようですが、考え直す必要があるんじゃないでしょうかね。

余談ですが、この件に質問した2人目の株主は、多分環境問題に関心の高い人なのでしょう。普段から関連のサイトを見ていて、エイチ・アイ・エスの発電所の問題は国際的な大問題である、と感じたのだと思います。しかし一般の人々はこの問題をほとんど知らないんじゃないでしょうか。よく言われることですが、インターネット、特にSNSの普及によって社会が分断されるというようすが垣間見えた出来事でした。

現状手がけているエネルギー事業は、いわゆる電力の卸市場から市場価格で、一部は大手電力会社から相対取引で買ってきた電力を小売りしているだけのことで、そんなにエキサイティングなビジネスという感じもしませんけど、やはり再生可能エネルギーを最終的には取り扱いたいと思っているはず。注力するつもりならば、しっかり環境保護の事情に通じてほしいものですね。

今回の総会での決議事項の一つは、グループを持ち株会社の下にぶら下げる形にまとめる組織の変更でした。そしてそれに伴う定款の変更。ついでに色々と新規事業が付け加わっています。で、列挙された事業を順に見ていくと、一番最後にこんな文言が。
「上記、各号に掲げる以外の事業」

ん? これは何を意味するんでしょうか。字面通り解釈すると、「色々列挙してきたけど、最後に、ここに書いてないこと何でもかんでも」を定款の最後に書き加えていることになります。

で、何を意味するんですか、と聞いてみた。それに対する答えは、事業環境の変化が早いから、新しい事業を始めるときに定款を変更している暇がない、というわけです。事業を始めた後で、事後承諾的に定款を変えるということなんでしょうが、定款の文言によれば、定款変更しないままにしてもかまわない、ということになります。

ともかく事情は分かりました、ということなんですが、これも帰宅してからググってみたら、やはりISSが反対を表明してました。ISSというのは議決権行使の助言をする会社。ここが反対しているということは、助言を求める顧客に対し、エイチ・アイ・エスの定款変更の議案には反対すべきである、と助言しているわけです。こんな定款の条文を見ても、エイチ・アイ・エスという会社は、ワンマン経営の様相をあれこれ呈していますね。

昨今はガバナンス経営が大事だ、というのが時代の流れでして、それは正論なのですけれど、一個人投資家の思いとしては、株式市場にお行儀のよい役所みたいな会社ばかり並んでいるようになっちゃ味気ない、というのが正直なところです。うちはワンマン経営です、という会社が上場していてもいいんじゃないの、と。一番効率よく成長する会社は、優秀な経営者がワンマン経営している会社である、というのは事実です。その代わり、経営者が暴走したり判断ミスをしたりすれば、業績に大きく響くことにもなる。それのリスクを分かったうえで投資をするというのは当然あっても良いと思うのです。エイチ・アイ・エスとはそういう投資先の一つだということですね。

昨今の伝染病騒ぎについての質問も当然ありました。今回のことも悪い循環にあるには違いないが、その間仕入れ値も安くなりますからね、というのが回答。韓国向けのビジネスも、今は最悪期を脱して回復基調だそうです。当面はハワイやグアム向けを頑張る、という話でした。

今回のことは旅行業に限らず、経済にかなり悪影響があるかももしれませんね。悪条件というものは常に起こりますし、仕方のないこと。心配なのは、売上の上昇傾向は続いているのに、利益がここ4~5年くらい頭打ちに見えることです。観光業の伸びしろはまだ大きいと思うんですが…。

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弁舌滑らかな社長のトーク ~ セコムの株主総会 [株主総会]

セコムの株主総会に出るのは2回目。記録によると前回は2010年です。その時のブログを見ると、最高顧問の飯田さん、さすが創業者は違う、という感想が書かれてますが、今年は残念ながら体調不良で欠席。ご高齢ですからね、仕方ありません。

社長はとてもよくお話になるんです。語り口も柔らかいし滑舌もよろしいんですが、たくさんしゃべる割に、印象に残る話がないんです。漠然とした話と妙に細かい話が一緒くたになって、耳障りは良いのだけれど、メモしようと思うようなポイントがない。何か知られたくないことがあってごまかしているような印象を受けます。そういうつもりはないんでしょうけれど。

質疑の最初、セグメント別の収益動向、特に原価率が上がって収益性の落ちたセグメントについて、という質問が出た時の回答は、色んなセグメントがありますけど、向いてる方向は全社同じだから、全体としての利益率を重視してます、って、やはり耳障りの良い言い方なんですけど、何も答えてない。投資はどこにどれくらどれくらい実施したかとの質問にも、たくさんしゃべって答えているのに、中身としては「人材とシステム」と言ってるだけ。

私は、敢えてセグメントの質問をいたします、とわざわざお断りしてから、BPO・ICT事業について聞きました。このセグメント、売上が32%も伸びていますから、この調子だと、もうすぐセキュリティーサービスに次ぐ規模になってしまいます。どうしてこんなに伸びているのか、知りたいのは当然ですよね。

この事業は、情報セキュリティー事業、データセンター事業、そしてコンタクトセンター事業、ということでどれも買収して加わった事業なのでしょう。各事業ともアウトソーシングの受託という形が多いようです。需要が非常に伸びていて、過年度の伸びも特殊要因があるわけではないとの回答でした。

質疑応答もかなり進んだ頃、株主から良い指摘がなされていました。全部自分でしゃべらないで、適宜回答を振ってほしい、ほかの取締役の話も聴きたいから、と。ただその意見の真意も伝わったのかどうか。社長からその後指名があって2名演台に立ちましたが、どちらも執行役でした。スピーチは良かったのですが、株主総会の審議の対象は取締役候補なんですよね。

取締役に女性がいませんが、という最近は定番の質問。昨年も出たのだそうです。私の9年前のメモにも、女性管理職の数が質問にあった、とありますね。セコムというと、企業イメージは割とソフトな感じですが、考えてみれば、自衛隊出身だったりする屈強な警備員が屋台骨なわけで、社風はマッチョなのかもしれません。女性役員の誕生はまだ先でしょうか…。

因みに総会みやげ、ありました。カタログギフト「セコムの食」とありますから、食品の通販事業もやってたんですね。自社製品のサンプル配布と考えてよいでしょう。おいしそうなもの、色々ありますね。焼き肉用のラム肉頂きます。

どうでもいいことではありますが、会場までの道案内にダメ出ししておきます。徒歩5分の駅から歩きましたが、駅の出口、左に出てからまた左に道を入るのですが、曲がり角に立ってなくちゃ、意味がありませんよね。会場のビルの入り口も、看板が出ているわけでもなく、矢印持って立ってるだけじゃビルを通り過ぎちゃうよ、と案内係の若者に苦言を呈してしまいました。つまんない役目でも、ちゃんと頭使って働いてください。

2010年の株主総会

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